研究実績の概要 |
2019年度は第1~2波の調査を実施した。先行研究を参照し、社会経済的地位や社会関係、メンタルヘルス等と自殺行動に関する質問項目を選定した。調査対象者は調査会社の登録モニター(20-29歳)であり、性別・年齢・学歴で層化して抽出した。2019年5月に第1波調査を実施した。実査は調査会社に委託し、納品された第1波データをクリーニングした。有効回収数は2,284ケースであり、性別・年齢・学歴別人口比は、就業構造基本調査(2017年)と近似していた。 過去1年間の自殺行動の経験率は①自殺念慮:8.0%、②自殺計画:3.9%、③自殺企図:2.3%であった。基礎的な分析の結果、職場での呼称が「非正規」であることや、週当たりの就業時間が35時間であることは、自殺念慮と明確な関連はなかった。これに対して、就業形態が有期契約であることと、自殺念慮の抱きやすさには統計的に有意な関連があった。しかし、この関連は女性ではみられなかった。 半年後の11月に第2波の調査を実施した。調査対象者は第1波調査の回答者である。第1波調査の回答者2,284名のうち、461名が12月の段階で登録モニターを退会しており、調査は不可能であった。そのため、残りの1,823名に調査を依頼し、データクリーニングを経た後の最終的な有効回収数は、1,113ケースとなった。脱落率は51.3%となり、半年間で過半数が脱落していたことになるが、性別・年齢・学籍別人口比に極端な変化はなかった。また、第1波以降に自殺行動を経験した者の割合は①自殺念慮:7.1%、②自殺計画:2.8%、③自殺企図:1.4%であった。現在、第1波・第2波を統合したデータの分析を進めている。
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