研究実績の概要 |
本研究では、2019年5月・2019年11月・2020年5月の3度にわたり、20歳~29歳の男女を対象に縦断的調査(インターネット・パネル調査)を実施し、若年非正規労働者の自殺行動の実態把握を試みた。回答者数は第1波調査:2,284名、第2波調査:1,113名(脱落率51.3%)、第3波調査:825名(脱落率は25.9%)であった。第1波調査から第3波調査にかけて、回答者の63.9%が脱落した。 第1波調査の分析から、男性の非正規労働者は正規労働者よりも、自殺念慮を抱きやすいことがわかった。ただし、ここでの非正規労働者とは「就業形態が有期契約である労働者」を指す。職場での呼称が「非正規」である労働者や、週当たりの就業時間が35時間である労働者では、正規労働者よりも自殺念慮を抱きやすいという結果は得られなかった。 以上の結果をふまえ、パネルデータを用いて、非正規労働者であることが自殺念慮を抱く確率を高めるのかという点を分析した。その結果、第1波調査時点での就業形態が第3波時点の自殺念慮に統計的に有意な効果を与えているという知見は得られなかった。その一方で、第2波時点での無職者は、第3波時点で自殺念慮を抱きやすいことが明らかになった。同じく第2波・第3波調査の分析から、親密な他者(家族・親族・友人)の自殺により、自殺念慮を抱きやすくなることがわかった。 上記のパネルデータ分析のほか、本研究では公的統計(人口動態職業・産業別統計と国勢調査)の二次分析をおこなった。分析の結果、2010年から2015年にかけての若年層の自殺死亡率低下の主要な要因は、無職者の自殺死亡率の低下にあることが明らかになった。
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