研究課題/領域番号 |
18K12958
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
山本 直子 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10817208)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日系ブラジル人 / 第二世代 / 分節同化理論 / 文化変容 / 貧困 / 自己肯定感 / 親子の会話 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、以下の3点である。 ①第二世代のインターネットやSNS利用の実態と、それが母語の維持、エスニック・コミュニティの維持・形成に果たす役割を明らかにする。 ②公立小中学校で展開される外国人支援制度の経年変化を調査し、これらが第二世代に与える影響を明らかにする。 ③上記の①および②が、第二世代のアイデンティティ形成にいかに結びつき、それが社会編入の仕方に如何なる影響を及ぼすかを明らかにする。 これらの3つの目的について、質的調査は2年目までにほぼ終了し、成果を学会報告および論文として公表した。さらに、単著として出版するための準備も進んでいる。しかしながら、主に目的①に関して、量的調査から明らかにしようとしていた部分については、計画が大幅に遅れている。新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出により、現地での対面でのアンケート調査の実施は不可能な状況が続いている。本来であれば、本年度は最終年度として、調査結果の分析および論文執筆、学会報告を行う予定であったが、未だに一部の調査が実施できていない。こうした状況から、本年度の前半には、当初の研究計画を大幅に変更することを決め、調査期間の延長を申請した。現地で配布し実施する予定であったアンケート調査は、行政による大規模調査、国勢調査およびインターネットを利用した独自調査を利用する計画に切り替えた。特に、全国の多くの自治体で実施された「子どもの生活実態調査」を統合したデータを利用した研究では、外国につながる子どもの自己肯定感、親子間の会話、学校における問題行動、社会とのつながり等を、親の国籍および経済状況から分析を行い、学会報告、学術研究会を行った。これらのデータを利用した新な成果をワーキングペーパーとしてまとめ、東京都立大学子ども・若者貧困研究センターのHP上で公開するなど、制約がある中でも研究成果を出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、在日ブラジル人の若者の母国との交流の頻度や内容を量的に把握するために、アンケート調査を実施する予定でいた。実施にあたっては、教会や若者たちの活動現場で用紙を配布することを計画していたものの、新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言の発令により、調査フィールドへの移動そのものが難しい状況が長期間続いた。加えて、これまで参与していた在日ブラジル人コミュニティにおける活動も縮小されたり、中止されたりした。そのため、フィールド調査は実施することが不可能な状況であった。
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今後の研究の推進方策 |
移動を伴うフィールド調査、対面でのインタビュー調査やアンケート調査の配布が不可能な状況が続き、今後の見通しもたたない状況であるため、研究計画の大幅な変更が必要だと判断した。当初の計画の代替として、「子どもの生活実態調査」および国勢調査を利用した分析を行う方向へと研究計画を変更した。またインターネットを利用してブラジル人の若者のインターネットやSNS利用に関する量的調査を実施する予定である。研究期間の延長を申請済であり、2021年度中に、当初の計画に近い内容の研究を実施できるよう、研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、以下の理由により、使用額が予定していた額よりも大幅に少なくなった。 1.新型コロナウィルスの感染拡大により、フィールド調査を行うことができなかった。 2.また、国内学会がオンラインでの実施となったため、学会発表のためにかかる交通費も必要としなかった。 3.本年度に予定していた量的調査の実施を来年度に延期した。
特に3については、インターネットを利用した量的調査を実施する方向で研究計画を修正し、費用を次年度に繰り越すこととした。インターネット調査で、分析が可能なだけのサンプルを集めるためには、当初の計画よりも多くの費用がかかる可能性があるが、新型コロナウィルス感染拡大により、引き続きフィールド調査および学会参加のための交通費が抑えられるため、その分を量的調査実施のための費用としたい。
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