• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

近代日本の住まいと自然に関する歴史社会学:昭和初期の健康住宅の実践から

研究課題

研究課題/領域番号 18K12959
研究機関神戸松蔭女子学院大学

研究代表者

西川 純司  神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 准教授 (60771136)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード住宅・住まい / 科学知識 / STS / アクターネットワーク理論 / 統治性研究 / 感染症
研究実績の概要

本研究の目的は、昭和初期の健康住宅を事例に、多様なアクターがどのように自然と向き合い、それを活用し、そしてその影響を受けていたのかを経験的に明らかにし、そこから近代日本における社会と自然の「共生」のかたちを提示することにある。本年度の研究実施状況は以下のとおりである。
(1)これまでの研究成果を総合的な観点からまとめたものを、商業誌(『現代思想』)に寄稿した。原稿では、戦前日本社会における結核と暮らしについて統治性の観点から分析し、現在の住まいのありようが感染症と不可分な関係の中から生まれてきたことを示した。そのうえで、感染症とともにある生活に働く権力を分析するためには、局所的な気候をめぐる複雑な実践の絡まり合いを丹念に解きほぐす必要があることを論じた。
(2)統治性研究の議論を整理し、それらに対するアクターネットワーク理論や科学技術社会論の影響を検討した。その結果、フーコーの生権力の議論が人間の生にのみ関心を向けていたのに対して、近年の統治性研究は人間の生の問題を人工物はもちろん、動物などの他の生命、さらには岩石や気候などの非生命との関係のなかで問い直す方向へと、議論を展開していることが明らかになった。成果は、日本社会学会第93回大会のテーマセッションで報告した。
(3)前年度に引き続き、分析枠組みの精緻化のために文献研究を進めたほか、国内外の複数の研究会に参加し情報交換を行った。まず、オンラインで開催されたSociety for Social Studies of Science 2020に参加し、科学技術社会論関連の最新動向を確認した。また、(2)の報告後、アクターネットワーク理論を専門とする国内の研究者との間で意見交換を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本年度の実施予定は、【1】居住者を対象した調査研究、および【2】文献研究であった。【1】について、前年度実施できなかった国立国会図書館での資料調査を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症の拡大のため断念せざるを得なかった。同じ理由で、本年度も旧富士見高原療養所を対象にした現地調査に赴くことが適わなかった。国内データベースを利用して若干の資料収集を行ったが、不十分である。そのため、本年度は収集済みの資料を総合的な観点から整理することで、研究成果を出すことに専念した。
【2】の文献研究に関しては問題なく進めることができ、成果も発表することができている。
以上からも、研究の進捗状況は遅れていると判断せざるを得ない。

今後の研究の推進方策

国立国会図書館での資料調査、および旧富士見高原療養所を対象にした現地調査を実施する。ただし、次年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の拡大による影響から、資料調査および現地調査の実施が見込めない可能性がある。その場合は、国立国会図書館ではなく近隣の大学図書館で一部の資料収集ができないかを模索するほか、現地調査についても同様の対応策を検討する。
また、文献調査を通して理論的検討を行うほか、オンラインで開催される研究会に参加して研究動向をつかむ。そのうえで、これまでに収集した資料をもとに、専門家や公的アクター、居住者、モノという多様なアクターをめぐる分析の結果を総合することに取りかかる。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、本年度予定していた現地調査および資料調査を実施することができなかったことから次年度使用額が生じた。次年度はまずこれらの調査を実施する方向で検討している。また、これまでに揃えられなかった情報機器を購入することも視野に入れている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 感染症とともに変わる住まいのかたちーー気候を統治する2020

    • 著者名/発表者名
      西川純司
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 48(10) ページ: 186-193

  • [学会発表] 統治性研究におけるアクターネットワーク理論の影響ーー近年の研究動向から2020

    • 著者名/発表者名
      西川純司
    • 学会等名
      日本社会学会第93回大会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi