研究課題/領域番号 |
18K12959
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研究機関 | 神戸松蔭女子学院大学 |
研究代表者 |
西川 純司 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 准教授 (60771136)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 住宅・住まい / 科学知識 / STS / アクターネットワーク理論 / 統治性研究 / 感染症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、昭和初期の健康住宅を事例に、多様なアクターがどのように自然と向き合い、それを活用し、そしてその影響を受けていたのかを経験的に明らかにし、そこから近代日本における社会と自然の「共生」のかたちを提示することにある。本年度の研究実施状況は以下のとおりである。 (1)これまでの研究成果をまとめた著書を出版した(『窓の環境史:近代日本の公衆衛生からみる住まいと自然のポリティクス』青土社)。全8章から構成される本書は、近代日本の公衆衛生について、都市インフラや住居、結核菌、自然との関係のもとで問い直すものである。このうち本研究の成果は健康住宅をめぐる第4章を中心に扱われているが、理論的・方法論的な観点から言えば本書全体の根幹をなしている。 (2)新型コロナウイルス感染症拡大について、住まいという観点から考察したものを商業誌(『すまいろん』「特集:コロナと住まい」住総研)に寄稿した。原稿では、コロナ禍およびコロナ後の新しい住まいのかたちが模索されるなかで、戦前日本の住宅論において健康や衛生がどのように論じられていたのか、健康住宅を例に検討している。健康や衛生は戦前日本の住まいをめぐる議論においてすでに大きな争点となっており、感染症と住まいは近代の初頭から社会的課題として位置づけられていたことを示すことによって、コロナ禍の住まいを歴史的な視点から位置づけ直している。 (3)前年度に引き続き、分析枠組みの精緻化を目的とした文献研究を行ったほか、国内外の研究会にオンラインで参加した。文献研究から得られた成果は、(1)の著書において理論的・方法論的に反映されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の実施予定は、前年度に引き続き、【1】居住者を対象にした調査研究、および【2】文献研究であった。【1】について、国立国会図書館での資料調査および旧富士見高原療養所を対象にした現地調査ともに、本年度もまた、新型コロナウィルス感染症拡大のため断念せざるを得なかった。そのため、本年度は出版というかたちでこれまでの研究成果を出すことに専念した。 【2】の文献研究に関しては順調に進めており、その成果は出版物などに反映させることができた。 以上から、研究の進捗状況は遅れていると判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の拡大も比較的落ち着いてきたこともあり、来年度は旧富士見高原療養所を対象とした現地調査を実施することを見込んでいる。また、同様に国立国会図書館での資料調査も実施する予定であるが、こちらについては「個人向けデジタル化資料送信サービス」が開始されることから、これを持って代替可能になるとも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、本年度予定していた現地調査および資料調査を実施することができなかったことから次年度使用額が生じた。次年度はこれらの調査を実施する方向で検討している。
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