研究課題/領域番号 |
18K12960
|
研究機関 | 九州共立大学 |
研究代表者 |
大和 裕美子 九州共立大学, 経済学部, 講師 (00779762)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 記憶 / 植民地支配 / 追悼碑問題 / 草の根 |
研究実績の概要 |
1990年代以降、日本各地で追悼碑を建立する運動が展開された。各地の追悼碑は、日本で命を落とした朝鮮半島出身者を日本の植民地支配犠牲者として位置づけ、反省を碑文に刻み追悼する目的で建てられた点で共通する。それら追悼碑の撤去や碑文の修正を要求する団体とそれに抵抗する建立団体・支援団体とが対立する現象が各地で生じ始めたのは、2010年代に入ってからである。 全国各地の追悼碑をめぐる軋轢問題の共通項は何なのか。なぜ2010年代から、全国的に追悼碑反対の動きは顕著となったのか。その土壌は、いつどのように形成されることになったのか。地域社会の文脈とは、どう関係するのか。 本研究は、現象の全体像を明らかにしながら、福岡県飯塚市の納骨型追悼碑「無窮花堂」に焦点を当て、「植民地支配を反省する記憶」を表象する追悼碑に否定的な人びとの意味世界を解き明かしながら、記憶が衝突する様相を描き出し、実態を探る。 今年度は、全国各地の追悼碑をめぐる軋轢問題の全体像を把握することを目的とした。実施したおもな作業は以下のとおりである。①文献資料の収集:歴史認識問題に関する文献、ヘイトスピーチに関する文献、その他在日コリアンを扱った文献を収集した。②追悼碑の調査:神戸電鉄敷設工事朝鮮人犠牲者追悼碑の調査をおこなった。③学会報告:第91回日本社会学会(社会運動)にて報告した。「追悼碑をめぐる軋轢問題にみる記憶の衝突――福岡県飯塚市「無窮花堂」を事例として」と題し、「無窮花堂」をめぐる攻防の構図と各団体の性格などに言及した。④その他:韓国・釜山の国立日帝強制動員歴史館を訪問した。 2018年は、「徴用工」をめぐる問題が多くのメディアで取り上げられ、一般の関心も集めた一年であった。また、京都ではヘイトデモと反対派が衝突する騒動も起きた。今後もこのような新たに生じた出来事や変化をフォローしながら、研究を進めていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度の11月より産前・産後休暇に入ったため、当初予定していた研究実施計画の遂行が困難となり、大幅な変更が生じた。当初の計画において1年目は、文献資料の収集と各地域の追悼碑問題の調査(建立経緯、状況、関係者へのインタビュー)を予定していたが、1基の追悼碑のみの調査にとどまり、ほかは文献資料の収集が中心となった。2018年11月から研究を中断しており、2019年12月に再開の予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究が対象とするのはアクチュアルな事象であるため、研究を再開したときに、状況が変化している可能性が大いに考えられる。したがって、中断中に生じた出来事や変化をフォローしていく作業が不可欠となる。 場合によっては、各地域の追悼碑問題のフィールドワーク先を限定し、「無窮花堂」調査を重点的に行うことも予想される。そうなったさいには、本研究が事例とする「無窮花堂」調査・分析のため、とくに必要と思われる事例に絞り込んでいくことも視野に入れながら、研究を予定どおり遂行できるよう、努めるつもりである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2018年度の11月より産前・産後休暇に入ったため、当初予定していた研究実施計画の遂行が困難となり、大幅な変更が生じ、文献資料の収集と各地域の追悼碑問題の調査(建立経緯、状況、関係者へのインタビュー)を予定していたが、1基の追悼碑のみの調査にとどまったたためである。研究再開後に追悼碑問題の現地調査を実施する計画である。
|