研究実績の概要 |
本研究では戦後日本社会における和服ないし着物の具体的な形象の変化とともに、この変遷が人間と衣服の関係性をめぐる理論的な意味について考えることを目的としている。最終年度である本年度は、『思想』1192号にて論文「贈与・所有・変身――衣服をめぐる欲望の相乗性と相剋性から」を発表した。 本論文ではまず人間と衣服の理論的関係が、なかでも戦後日本社会における着物を通して、「作るモノ」から「買うモノ」へ、そして「借りるモノ」への変容を遂げていることを明らかにした。さらに、社会学者の見田宗介=真木悠介における人間の欲望をめぐる相乗性と相剋性の議論に準拠しながら、それぞれのなかに「贈与」、「所有」、「変身」という衣服(着物)との関係における人間の欲望がみられることを析出してきた。 また研究期間全体を通じては、論文「衣服と人間の関係史――つくること、買うこと、借りること」『広告』Vol. 416やThe Transformation of the Kimono and Postwar Japanese Society: A Theory Concerning the Relationship between Humans and Clothes, Society and Theory, 34(1)、などにて人間と衣服(着物)をめぐる理論的な変容について明らかにするとともに、「生活着の着物と衣服を作ること――終戦から1950年代(下)」『Fashion Talks...』Vol. 8や「非日常化する着物と衣服を買うこと――1960年代から1980年代(上)」『Fashion Talks…』Vol. 13、「非日常化する着物と衣服を買うこと――1960年代から1980年代(下)」『Fashion Talks...』Vol. 14、などにおいて終戦後から1980年代までの各時代における着物の形象について分析した。
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