研究課題/領域番号 |
18K12964
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
平 将志 新潟大学, 現代社会文化研究科, 博士研究員 (60812922)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 「エネルギー革命期」 / 産炭地 / 生活保護制度 / 「第二次適正化」政策 / 「逆福祉システム」 / 炭鉱離職者対策 |
研究実績の概要 |
今年度は、北九州市立文書館、北九州市中央図書館、福岡県立図書館、大牟田市立図書館、熊本県立図書館など各図書館において調査を行った。また、これらの調査に加えて、大牟田市議会事務局、保健福祉部、荒尾市議会事務局、建設交通一般労働組合においても、会議録の閲覧や資料収集を行った。これらの資料を分析するにあって、理論的枠組みが必要となったため、副田義也が提唱した「逆福祉システム」や、当事者団体による生存戦略であるメイクシフト・エコノミーなどに関する資料を入手した。 北九州市調査の成果は、2019年9月の日本社会福祉学会において、「生活保護制度における『逆福祉システム』の起源と展開―福岡県北九州市を事例として」というタイトルで個別報告を行った。また、資料収集で得られた資料と知見から、2019年6月の日本地域政策学会において「『外発的発展』と『内発的発展』の相克―北海道夕張市の産炭地域振興政策を事例として」を、2020年1月の日本地域政策学会関東支部においては「公的医療機関を中心とした医療供給体制の形成-新潟県における県立病院の再編問題と関連させて」を、それぞれ報告した。 さらに今年度に実施した調査、学会報告を踏まえて論文を投稿した。まず、『現代社会研究」には、「日本における医療保障の階層性―1950年代の医療給付の実態を中心として」を投稿した。つぎに『社会福祉学」には「雇用政策とソーシャルワークの交錯-炭鉱離職者対策と就職促進指導官による就職指導』を投稿した。後者については、再査読の結果、掲載決定となった(掲載号、ページ数は未定)。 以上が、今年度の研究実績の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、福岡県中間市、嘉麻市(旧山田市)及び北九州市において、資料調査を実施する予定であったが、前年度の調査が完了したため、中間市、嘉麻市の調査を前倒しして行った。そのため今年度は、従前の調査予定先であった北九州市に加えて、大牟田市、熊本県荒尾市での調査を行うことにした。これらの調査により、当初予定した調査はおおむね完了した。 また、理論的枠組みを明確にするため、ポーガムの「社会的降格」や副田義也の「逆福祉システム」、さらにメイクシフト・エコノミーなどに関する資料を入手した。このうち「逆福祉システム」については、北九州市における生活保護制度の実態を解明するために、有益と考えられる枠組みであり、政府間関係の検討に対しても、適用できると考えられる。加えて、これまでの研究は、おもに行政サイドの視点に傾斜していたため、当事者からの視点が必要となった。そこで、建設交通一般労働者組合大牟田支部において、各種調査を実施した。その結果、メイクシフトとの親和性があることが確認することができた。そのため大牟田市における生活保護制度の展開を、当事者団体による「弥縫策」と関連させて検討を試みた。さらに『社会福祉学』には炭鉱離職者対策と雇用促進指導官によるケースワーク方式の就職指導を、雇用政策とソーシャルワークとの交錯がみられた先駆的事例として位置づけた論文を投稿した。前述のように、この論文は掲載が決定されている。 以上を総合判断すると、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの各種調査により、当初予定していた資料は、概ね入手することができた。そのため次年度は、これらの資料調査で得られた知見について、積極的に学会報告を行う。具体的には、すでに2020年5月の社会事業史学会において、「エネルギー革命期における生活困窮者救済と生存戦略」、2020年6月の日本地域政策学会において、「『自治』の欠如と『経路依存』」というタイトルで個別報告が決定している。 次年度は、研究期間の最終年であるため、個別報告の成果を早急に論文として纏めることにしたい。
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