研究の最終年度である本年度は、これまでの調査・研究で得られた知見を、論文として纏め、積極的に査読付き雑誌に投稿を行った。本年度は、事前に前倒し請求を行い、調査予定地であった大牟田市議会事務局や大牟田市立図書館において、調査を行っていたため、研究遂行に、コロナ渦の影響は生じなかった。あわせて、建設労働一般労働組合大牟田支部(以下、大牟田支部)において、新資料を入手することができた。 まず、『社会福祉学』には「雇用政策とソーシャルワークの交錯―炭鉱離職者対策と就職促進指導官による就職指導」を、つぎに『大原社会問題研究所雑誌』には「労働者災害補償保険法の制定と所管問題―「社会保障化」論争の歴史的前提」を、さらに『社会事業史研究』には「北松炭田における炭鉱離職者救済―長崎県松浦市を事例として」を、それぞれ投稿し、掲載あるいは掲載可となっている(すべて査読あり)。このうち『社会福祉学』と『大原社会問題研究所雑誌』の掲載論文は、本研究を遂行するなかで得ることができた知見や資料を活用したものである。『社会事業史研究』に掲載予定の論文は、産炭地における被保護階層の膨張に、財政再建団体指定による各種合理化や、生活扶助基準の諸改善が、寄与していることをあきらかにしたものである。 これらの研究により、「エネルギー革命期」産炭地における被保護階層の膨張は、直接的には炭鉱の休閉山によるものであるが、財政再建団体指定や生活扶助基準の諸改善などが複雑に結びついて生じたことが示唆された。ただし、このような被保護階層の膨張要因は、果たして、特定の地域に限定されるものなのか、あるいは産炭地に共通するものなのかについては、今後の検討課題である。
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