研究課題/領域番号 |
18K12970
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研究機関 | 名寄市立大学 |
研究代表者 |
宮崎 理 名寄市立大学, 保健福祉学部, 講師 (50770020)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 反レイシズム・ソーシャルワーク / レイシズム / ソーシャルワーク / 実践モデル / 実践理論 / 日本 / イギリス |
研究実績の概要 |
今年度は、主としてイギリスの反レイシズム・ソーシャルワークの理論に関する文献を収集し吟味した。特に、反レイシズム・ソーシャルワークにおいて、レイシズムがどのようなものとして捉えられているのか検討した結果、つぎのことが明らかになった。まず、レイシズムは多次元的なものとして捉えられている。それは、① Personal (individual) racism(個人的レイシズム)、② Institutional racism(制度的レイシズム)、Cultural racism(文化的レイシズム)の3つの次元である。そして、それら3つの次元に分けられるレイシズムは、ダイナミックなものとして捉えられている。例えばL. Dominelliは、「レイシズムは、社会的に構築されたものであり、日常生活と専門職による実践の細部に埋め込まれ、交渉しあう3つの相互作用的要素(personal、institutional、cultural)で構成される多次元的な抑圧の形である」と述べている(Dominelli 2018: 18)。 こうしたレイシズムの捉え方は日本においても応用可能であり、個別に問題化されることの多い制度的レイシズムとヘイトスピーチのような個人的レイシズムを、相互に関連づけて把握することに役立つ。 また、反抑圧ソーシャルワークや反差別ソーシャルワーク、フェミニスト・ソーシャルワークなどに関する国内外の先行研究についても検討を行った。その結果、それらのソーシャルワーク実践理論から有用な知見を得ることができた。特に、反抑圧ソーシャルワークの先行研究で指摘されているソーシャルワークの「非政治化」(depoliticization)の問題は、反レイシズムの観点からもその問題化と克服が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イギリス現地のソーシャルワーク教育において、反レイシズム・ソーシャルワークがどのように取り入れられているのか調査するにあたり、反レイシズム・ソーシャルワークの理論を丁寧に理解する必要があると考え、今年度は先行研究の検討に重点的に取り組んだ。それは、反レイシズム・ソーシャルワークの主要な文献を検討するなかで、他のソーシャルワーク実践理論との類似性が見つかり、ソーシャルワーク実践理論全体のなかでの位置づけを一定程度把握する必要が出てきたためである。また、類似性を持つソーシャルワーク実践理論の基盤理論や影響を与えた知見(例えば、ポストコロニアリズム、フェミニズム、ジェンダー・セクシュアリティ研究、ポストモダニズムの諸理論など)についても文献を収集し検討した。 さらに、さまざまな研究会への参加や他分野の研究者との交流から、これまでソーシャルワーク研究にあまり取り入れられてこなかったJ. バトラーの思想などについても検討する機会に恵まれた。 これらの取り組みにより、次年度取り組む予定である調査の計画策定の見通しを立てることが可能になった。さらに、本研究全体の理論的な方向性を明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、イギリスのソーシャルワーク教育における反レイシズム・ソーシャルワークに関する現地調査を実施し、その位置づけや教育方法、意義や課題について明らかにする。 さらに、日本におけるレイシズムの実態とその克服を目指したソーシャルワーク実践について調査を実施して明らかにする。 それらと並行して、他のソーシャルワーク実践理論や関連領域の先行研究を援用しながら、日本におけるレイシズムの克服を目指したソーシャルワーク実践モデルを模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、研究計画を変更して国外調査を行わなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、イギリスのソーシャルワーク教育における反レイシズム・ソーシャルワークに関する調査、日本国内におけるレイシズムの実態とソーシャルワーク実践の状況に関する調査に係る旅費および調査実施・分析に係る費用等として使用する計画である。 引き続き、文献購入費、学会・研究会参加に係る旅費等としても使用する。
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