研究課題/領域番号 |
18K12975
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
橋本 理子 城西国際大学, 福祉総合学部, 助教 (70567247)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地域社会事業史 / 方面委員 / 社会事業の形成 / 埼玉県 |
研究実績の概要 |
本研究は、「各地域ではどのように社会事業が形成されたのか」という問いにこたえるために、埼玉県を事例として、地域における社会事業が、「住民の生活」と「実践活動」と「社会のあり様(政策)」の交互作用の中でいかに形成され、展開したのかを明らかにすることを目的とするものである。 2019年度は、当初の計画通り、①埼玉県における社会事業形成の大きな要因の一つと考えられる「埼玉共済会」の設立及び展開について検討した。その結果、先行研究では扱われてこなかった史料を得ることができた。方面委員制度の転換に着目することで、共済会の支援が従来地域に存在した「社会のあり様」を組み込んだ仕組みを取り入れたこと、その仕組みを受けて実施された「実践活動」は「住民の生活」に影響を与えたこと。さらに「住民の生活」状況によって支援内容が変更され、それが「社会のあり様」を変化させたことを論じ得た。 ②日本の社会事業成立(形成)がどのように論じられているかについてのレビュー論文を作成し「〈研究ノート〉日本の社会事業形成過程に関する研究の成果と課題」(『城西国際大学紀要』28,95-111,2020.3)として発表した。日本を一つの地域として検討したのでは、社会事業形成時期を確定することが難しくなっていることから地域的研究の必要性を導いた。さらに、日本における社会事業形成の検討にも、通史的・全体的視点が用いられていることを示した。 ③昨年度の研究成果を、「地域社会福祉史の視点と方法」(『社会事業史研究』56,91-104,2019,56)として公表した。 2019年度に収集整理する予定であった各市町村の資料は、一部収集が叶わなかったため、2020年度に実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年2月~3月の春休み期間を利用し、県内各地域(旧秩父郡・大里郡を中心)を訪問し、史料を収集する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応のため、図書館・資料館が閉館され資料収集が実現しなかった。 しかし、既に収集済みの資料から、埼玉県という大きな地域レベルでも、本研究の目的である「住民の生活」と「実践活動」と「社会のありよう」の交錯を描くことができ、論文の執筆に至っている。研究の目的に近づく成果がでていることから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の計画は、以下の4点である。①市町村レベルでの住民の生活と社会事業実践と政策等社会のあり様を解明する手掛かりとして、関係施設が開館され次第、未収集資料の整理収集を優先して実施する。資料より町村レベルにおける社会事業形成過程を解明する。その際、県のレベルでは検討することが難しい、「住民の生活」に着目する。②2019年度より引き続き共済会福利委員の人選や実践が住民の生活だけでなく、埼玉県の社会事業の展開に与えた影響を分析する。③①・②について、学会での研究発表や、論文の投稿等成果の公表を行う。④2020年度は最終年度となるため、2018年度からの成果をまとめることを目指す。 2019年度に資料収集が未実施となったのは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応のためである。今後も図書館・資料館・文書館の閉鎖や、調査の困難さが続いた際には、資料収集方法が課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月~3月の春休み期間に、旧秩父郡・大里郡に宿泊を伴う資料収集実施し、さらに日帰りでその他地域への資料収集を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応のため実施できなかったこと、当初、複写費を計上していたが、史料の多くを撮影することができ、複写費が節減できたこと、物品の購入費用が、当初計画よりも安価に購入できたことから、次年度使用額が生じている。 資料収集を2020年度に繰り越すため、旅費の大部分は使用する予定である。複写費として計上したその他費用では、地域資料等書籍を入手し、写真データを保管する外付けHDDを設置する計画である。
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