研究課題/領域番号 |
18K12980
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研究機関 | 嘉悦大学 |
研究代表者 |
酒井 翔子 嘉悦大学, 経営経済学部, 准教授 (50740403)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 格差是正 / 最適課税 / 欧州税制 / 所得再分配 |
研究実績の概要 |
本研究者は、これまで英国租税制度について、歴史的・論理的観点から現行制度を分析し、日本制度との比較研究を進めてきた。英国の租税制度は、EU法が強く反映されている一方で、カナダ・オーストラリア・ニュージーランド等の英連邦諸国に対し、今も根強い影響力を持つ。そのため、欧州諸外国の政策動向や租税制度の国際的潮流が多く蓄積されてきた。これらの研究蓄積からは、わが国税制の所得再分配機能は、非常に限定的であり、将来を見据えた租税制度からは、かけ離れた状況にある。これは、社会保障財源のための消費増税、高所得者増税のための最高所得税率引上げなど、目下の課題の対応策として、その場しのぎの時限的な税制改革に奔走してきた結果であり、長期の政策構想を練るための判断指標が確立されていないことが原因している。 所得再分配を意図して給付付き税額控除の導入を果たした国・地域では、迫る格差社会に備えて、完全給付方式のベーシックインカムが試験的に導入されており、これらの文献整理を1年目に行った。 本研究者は、持続可能な社会の実現という観点からは、非常に後進的なわが国の税制に重大な問題意識を抱いており、①財源確保のための最適な税体系、②格差是正のための所得再分配方法の現実に向けた政策構想の実現に向けた研究を蓄積している。 上述の①・②のテーマに関しては、平成30年度は、19th Global Conference on Environmental Taxation と15th Western Economic Association International Conferenceにおける2つの国際学会で報告し、1本の論文投稿を行っている(詳細は「現在までの進捗状況」参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、本研究の主要な問題意識のうち、まず①財源確保のための最適な税体系の観点からは、OECDにおいて最適課税の一つに挙げられた環境税の研究に着手し、19th Global Conference on Environmental Taxation において、「Current situation and issues of environmental taxes in Japan」の報告を行った。 また、消費税に関しては、これまでの研究蓄積を活かし、諸外国の現状も考察しながら「消費課税の現状と課題-欧州諸国の議論を中心として-」の論文執筆を行った。 さらに、②格差是正のための所得再分配方法の現実に向けた政策構想に関しては、15th Western Economic Association International Conferenceにおいて「The Lack of income redistribution function in Japanese tax system」の報告を行い、わが国所得税の所得再分配構造への問題を指摘した。 ただし、先行研究・関連文献の整理については、当初の予定よりも収集できている文献・事例が少ないため、これについては、2年度以降にも随時行うこととする。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引続き、①財源確保のための最適な税体系、②格差是正のための所得再分配方法の現実に向けた政策構想の実現の2テーマに焦点を当て、研究を進めていく。 最適課税に係る環境税については、今年度も9月に開催される20th Global Conference on Environmental Taxationにて報告し、格差是正のための税制に関しては、12月に開催される租税実務研究学会で報告あるいは論文投稿する予定である。 さらに、主要研究対象となる英国税制に関して、ベーシックインカムを中心とする税制動向の現地調査を行うべく、8月中旬の研究出張も計画している。現在進捗度の低い「先行研究・関連文献の整理」に加え、現地調査で入手した最新の情報を学会報告・論文投稿に反映させていくことで、2年度目の研究成果を得る予定である。
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