研究課題/領域番号 |
18K12984
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
安藤 佳珠子 長崎国際大学, 人間社会学部, 講師 (80804301)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ひきこもり |
研究実績の概要 |
今年度は、調査実施を予定していたが、調査項目を検討する上での枠組み設定の際検討が必要となり、理論を中心に整理した。業績としては、査読付き原著論文3本、講演2回をあげる。 まず、宮本みち子の戦後型青年期モデルの成立について整理し、従来の標準化された移行ルートがいかに社会的につくられたのか。また1990年代以降、若者の貧困化が可視化されるなかで、その移行ルートを辿ることのできない若者たちが増加していることを整理した。そのなかで、不安定な移行ルートを辿る若者ほど人間関係が孤立化し、自分の人生経路を自己責任にしてしまいやすくなることを指摘している。さらに、その上で、ひきこもりの若者が、彼らが内面化する生きづらさは、彼らの発達の過程―家族や学校、職場がいかに彼らを包み、外界からの刺激からバリヤーしてきたのかーによって生じることを指摘した。また、ひきこもりの若者に対する支援において、アクセル・ホネットの承認論に基づき検討をした。 ひきこもりの若者をもつ家族に対するグループワークを実施し、家族のエンパワメントとソーシャルワーク過程について、参与観察を行っている。家族は、子どもが現状に対して罪悪感をもっているが、自らの変容ではなく、子どもが変容することを望む。家族は、これまでの状況から、変容することへの恐れがあり、グループ内での関係性を変えること自体にも大きな抵抗をもつ。それに対して、ソーシャルワークは、グループに対して具体的な課題を課すことによって、グループのエンパワメントを促す。課題を実施するなかで、グループのメンバーが個々に自己の変容について気づき始めることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由は、調査実施を予定していたが、調査項目を検討する上での枠組み設定の際検討が必要となり、理論を中心に整理したためである。予定していた調査対象の事業所を分析するにあたり、各々で多様な目的や実践が展開されていた。家族支援を中心に展開してきた事業所では、親支援の不随としてひきこもりの若者に対する支援となってしまう。また、地域によっては、支援機関が保健所のみで、その内容は、保健所で実施する家族教室のみとなっており、個別支援はほとんどないという状況もあった。そして、教育をベースとした事業所もあり、そこでは若者たちが勉強をするなかで、課題をこなし、自信をつけていくことを目的としていた。事業所によって、支援の目的や方向性に差異があり、それらを比較検討するにあたっては、分析の枠組みを再考する必要があった。そのため、今年度は、その分析枠組みの再考を中心に取り組むこととなった。 また、ひきこもりの若者をもつ家族に対するグループワークを実施し家族のエンパワメントとソーシャルワーク過程について、参与観察を行っている。グループの変容とソーシャルワークの関係性については、観察のなかで明らかになっている。しかし、グループを展開する上で、個別の聞き取りができる状況には至っていない。そのため、今年度は、聞き取りを実施することが可能とはならなかった。
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今後の研究の推進方策 |
調査項目を2019年7月末までに作成し、所属大学の倫理委員会にかける。その上で、同年8月・9月に調査を実施する。調査対象の事業所は、ひきこもりの居場所、通信制高校、中間就労としており、また対象者としては、ひきこもりの若者、家族、支援者としている。10月以降、聞きとりの内容を分析し、来年度、日本社会福祉学会において報告し、論文として提出する。 昨年度の結果については、今年度、6月8日市民向けの講座、および7月20日上海大学プログラムでの講義、8月8日長崎国際大学社会福祉学会での報告、8月21日に長崎市保健センターでの講座、9月21・22日日本社会福祉学会での報告として、発表および成果の還元をする。さらに、研究成果については、論文として執筆し、8月末には投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査の聞き取りの実施までに至らなかったため、当初、購入予定であったNvivo等の購入をしていない。2019年度には調査を実施するため、Nvivo等の購入を、当該年度に実施する。
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