本年度、2022年9月から2023年1月にかけて、ひきこもりの家族13人とひきこもりの当事者1名に半構造化面接形式のインタビュー調査を行った。インタビューの目的は、ひきこもりの若者とその家族がどのように支援を受け、その支援がいかに影響したか、さらにその過程でどのような変化があったのかを明らかにすることとした。各インタビューは約120分で実施した。この調査結果は現在分析中であり、特に支援を通じてひきこもりの当事者やその家族がどのように変化したのか、また、その支援がどのように作用したのかに焦点を当てている。また、家族が「子どもを自分たちだけで何とかしたい(何とかしなければならない)」という思いが、既存のサービスへアクセスするまでに時間がかかる一つの要因になっていることが指摘できる。 さらに、以下に今年度の主な業績をあげる。2022年7月には、ひきこもりの若者へのソーシャルワークが「葛藤」の概念を用いて説明できるのかについて探求し、その結果を地域ケアリング誌に掲載した。2022年10月に日本社会福祉学会において、「『ひきこもり人権宣言』にみるレジスタンスは被害者性を脱却できるのか」というタイトルで口頭発表を行った。また、同タイトルの論文を2023年3月に日本福祉大学社会福祉論集に掲載した。同じく2023年3月には、若者へのソーシャルワークがどのような目的を持つべきかについて、「うまく困る」や「依存先を増やすこと」を手がかりに調査し、福祉研究誌にその成果を発表した。
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