認知症高齢者は増加し、公衆衛生上の課題となっている。本研究では、信頼、規範、ネットワークといった社会的なつながりであるソーシャル・キャピタルが豊かな地域に暮らす高齢者は認知機能が低いのかを明らかにすることを目的とした。具体的には、以下の2点を実施した。1)地域のソーシャル・キャピタルと認知症のリスクである手段的日常生活動作能力(IADL)低下と軽度認知障害(MCI)との関連を検討すること、2)地域のソーシャル・キャピタルと認知症との関連を検討することである。 2018年度は、日本老年学的評価研究(JAGES)の縦断データを整備し、分析用のデータセットを構築した。また、3年間のパネルデータを用いて、地域のソーシャル・キャピタルとIADL低下およびMCIとの関連を検証し、社会参加が豊かな地域に暮らす高齢者はIADL低下とMCIのリスクが低いことが示唆された。地域のソーシャル・キャピタルとIADL低下との関連については、論文にまとめ、国際誌に採択・掲載された。地域のソーシャル・キャピタルとMCIとの関連については、国内学会で発表した。2020年度は、2018年度に構築した約6年間のデータセットを用いて、地域のソーシャル・キャピタルと認知症との関連を検証した。その結果、地域のソーシャル・キャピタルと認知症との関連において、追跡期間の課題はあるが社会参加が豊かな地域に暮らす高齢者は、認知症リスクが低い可能性が示唆された。
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