研究実績の概要 |
本研究は、障害分野と高齢分野との間で横断的な支援ニーズに着目し、高齢障害者の実態把握及びサービス提供状況に関する研究、及び高齢分野(地域包括支援センターが中心)と障害分野(障害者相談支援事業が中心)の地域でのアウトリーチに関する比較研究から構成される。 最終年度は、①障害のある人が高齢期を迎える際に知的障害者本人の情報を蓄積する「ライフストーリーワーク」による介入効果に関する海外文献検討、②特別養護老人ホームにおける知的障害者の実態調査、③高齢・障害を問わない地域の居場所づくりに関する実践を行うフィールドへの指導・助言を行った。 新型コロナウイルス感染症拡大の影響による障害者に対する地域の見守り活動の調査結果を自治体に共有した。 ①では介入研究7件、実践研究4件が該当し、そのうち英国の文献が8件であった。「心理的効果」として「気分の落ち込みの防止」「楽しみ」「誇り・やりがい」「行動の変化」「不安の共有・対処」「正しい自己認識」が、「社会的効果」として「周囲の人からの理解」「個人としての認識」「周囲の人との関係」「社会への影響」「社会スキル」、「その他の効果」として「ウェルビーイング」「思い出を振り返り保存する機会」「デジタル技術向上」に分類された。②では特養にいる65歳以上の知的障害のある利用者は0.94%で,1/3の特養に存在した。特養にいる知的障害者は障害者支援施設の知的障害者に比べて身体機能、認知機能、食事摂取機能、排泄機能が低く、てんかんを持つ者も多かった。新規入所は「家庭」からが最も多く、前期高齢者のうちに特養に移行する者が多い傾向にあった。特養からの退所は「死亡退所」「病院への入院」が7割を占めた。
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