本研究の目的は、深刻化する今日の貧困問題の改善を実現するための基礎的作業として、最低生活保障の基本原理構築に向けた検討を行うことである。具体的には、①憲法25条(生存権・生活権)が「社会的生活保障制度」を志向していたことを明らかにする理論研究と、②生活に困難を抱えている人々の生活実態を明らかにする実証研究(実態調査)を軸に進めていく。 本研究は2020年度(3年目)で終了予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で特に②の実証研究(実態調査)を行うことができなかったため延長した。結果的に4年目(2021年度)も②の実証研究(実態調査)を行うことは困難であり、文献調査や各種調査の検討を行うにとどまった。ただし、これまでの研究成果に対するコメントへの検討を行うことや公的機関が行った調査をまとめることによって、一定の研究成果を出すことはできた。また、外部からの依頼に応じて研究成果の一部を社会に還元している。 具体的な研究成果としては、日本医療福祉政策学会で学会報告を行い、公益財団法人日本医療総合研究所でも研究報告を行った。公益財団法人日本医療総合研究所の『国民医療』には論考を掲載している。分担執筆ではあるが、書籍にも研究成果を発表した。 当初の計画では②の実証研究(実態調査)を行うことで、①の理論研究を発展させる計画であった。②の実証研究(実態調査)を行えなかったことにより、研究課題を達成できたとは言えなかった。今後も残された研究課題に取り組んでいきたいと考えている。
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