研究課題/領域番号 |
18K12997
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研究機関 | 新見公立大学 |
研究代表者 |
増井 香名子 新見公立大学, 健康科学部, 講師 (30815220)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DV被害者 / 子ども / 児童虐待 / 支援 / ソーシャルワーク / トラウマ / 施設 / 研修 |
研究実績の概要 |
本研究は、DV被害者、子ども、支援現場の実態を十分に理解したうえで、被害者の状況(ステージ)に応じた有用な支援を検討し、支援現場に活用できる知見を提供することを目指している。2年目である2019年度は、2018年度の取り組みを深化させるとともに、DV家庭で育つ子どもと被害者である親の支援を検討するための研究に着手した。主には、以下の5点に取り組んだ。 1点目は、これまでの研究成果を著書『DV被害からの離脱・回復を支援する:被害者の「語り」にみる経験プロセス』にまとめた。また、別の受託研究の共同研究者として新たに当事者への調査を行った。これまでの知見を発展させる形での調査項目を設定し、ステージごとの支援の経験や子どもとの関係、またPTSDとPTGについて把握した。 2点目は、支援現場の支援力向上に寄与することを意図し、支援者向けの研修を約40回実施した。研修実施後のアンケートを行い、支援の困り感等を把握している。また、施設の職員向け研修プログラムを作成し、母子生活支援施設2か所において実施した。研修前後にアンケート調査を実施し研修の効果と前後の変化を確認し、論文にまとめた。 3点目は、ニュージーランドオークランドの3か所の支援機関に訪問し、ステージモデルを提示しステージごとの支援内容についてのヒヤリングを行った。 4点目は、DV家庭で育った若年者に対しインタビュー調査を開始した。6名の調査協力を得ることができ、DV家庭で育ったなかでの経験や現在の意味づけなどを聴くことができた。 5点目は、児童相談所・婦人相談所の職員とともに「DV被害者と子どもの支援研究会」(FAV-RIC)を立ち上げた。研究会においては、児童福祉機関およびDV相談機関の支援のあり方、双方の連携について検討を行っていく。まずは、国外の支援ガイドラインの共有、作成したアセスメントシートの検討などの取り組みを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで築いてきた支援機関とのネットワーク等により、調査への協力が得られDV家庭に育った経験のある若年者にインタビュー調査を実施することができた。また、別の研究枠組みではあるもののでDV被害当事者に再度調査を実施することができ、当事者の支援の経験や意味付け、子どもとの経験について把握することができた。さらに、DV相談機関・児童福祉機関の実践者とともに支援を検討するための研究会を立ち上げることができた。これらは、本研究が目指す、被害者・子ども・支援者の三者の十分な理解の上に実効性のある支援を検討するための根幹となる取組であり、順調に進展しているといえる。若手研究のため共同研究者はいないが、様々な機関や人とのつながりのなかで研究を進めることができていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響により研修や調査の実施が行いにくい状態となっている。よって、特に2020年度前半は、昨年度までに実施してきた調査の分析を行うこと、講師として実施してきた研修プログラムの知見をまとめることに主軸を置く。加えて、DV被害者支援をソーシャルワーク理論から整理することを行っていきたい。それらを学会報告や論文により発信していくことに加え、支援者に向け、ガイドブックなどにまとめていく準備を進める。研究会についてはオンラインもまじえ、研究と実践の行き来により実践現場に有用な知見の検討とその積み上げを行う。DV家庭の子どもが重篤な虐待を受ける事案により、家庭にある暴力としてのDVと虐待への介入の必要性がより社会課題として認知されるようになったが、有効な支援や介入方策の議論はまだ緒についたところであるといえる。これまでのDV被害者支援の研究の知見を軸に、被害者である親と子どもへの介入や支援のあり方の研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していた出張が新型コロナウィルスの影響により中止になったことが主な理由である。
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