| 研究課題/領域番号 |
18K12998
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| 研究機関 | 尾道市立大学 |
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研究代表者 |
佐藤 沙織 (高間沙織) 尾道市立大学, 経済情報学部, 准教授 (20782030)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 病院 / 福祉施設 |
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| 研究実績の概要 |
本研究の目的は、「なぜ戦後日本では病院が福祉施設のように利用され続けるのか」という問いの検討を通して、戦後日本の政策の指向性（＝福祉供給のための予算や機能を医療供給へ傾倒することに寛容な政策の指向性）の背景にある構造を明らかにすることである。
本研究の目的を達成するため、方法として、高齢者処遇における医療供給と福祉供給の「カネ」（＝医療供給と福祉供給のために政策的にどのような資金が投下されたのか）と、「ハコ」（＝カネが投下された病院及び福祉施設は、誰を受け入れ、どのように運営されてきたのか）に着目している。
令和２年度は、令和元年度末に今後の課題として設定した「「社会福祉費」とは何か」という問いについて、医療供給と福祉供給に関わる「カネ」を分析することで検討した。具体的には昭和38年度から平成9年度までの『社会保障統計年報』を用いて、国と地方が医療供給と福祉供給のためにどの程度資金を投下してきたのかを歴史的に分析した。
上記の作業から明らかになったのは、高齢者処遇や生活困窮者処遇のために支出された社会福祉費や公的扶助費の大半が、医療給付費として支出されていたという事実である。すなわち、戦後日本では、社会福祉費という「カネ」の大半が、福祉目的というより医療目的で支出されていたため、福祉施設利用が制約され、病院利用が高まった可能性が指摘できた。病院が福祉施設のように利用された背景には、こうした「カネ」の流れにおける日本的な特徴があるといえるだろう。
したがって、今後、医療だけに偏らない医療と福祉の相互連携による支え合いの仕組みを構想するには、そもそもなぜそのようなかたちで福祉を医療によって提供するようになったのかという問いを明らかにする必要がある。以上のかたちで、今後の研究のための具体的課題が明確化したという意味で有意義な作業であったといえるだろう。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度末時点の計画では、令和２年度は、医療供給と福祉供給のカネについて、「①戦後日本の一般会計予算における『社会福祉費』とは何なのか。②なぜ、社会福祉費予算は、医療供給のために傾倒されやすいのか。」という課題に答えを導き、論文として公表する予定であった。
同時に、医療供給と福祉供給のハコについて、「①なぜ、制度創設当初、福祉施設に医療機能を持たせようとする議論があったにもかかわらず、それは棄却されたのか。②なぜ、福祉に医療機能を持たせる抵抗は大きいのか。」という課題にも対峙し、論文として公表する予定であった。
しかし、Covid-19禍において資料所蔵先の機関にアクセスできなかったり、予定していた聞き取り調査が実施できなかったため、カネにおける①の論文のみにとどまった。ゆえに、やや遅れていると評価できる。
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| 今後の研究の推進方策 |
令和３年度は、平成３０年度、平成３１年度、令和元年度、令和２年度の作業を総括する。
具体的には、医療供給と福祉供給のカネについて、「①なぜ、社会福祉費予算は、医療供給のために傾倒されやすいのか。②そもそもなぜ福祉を医療によって提供するようになったのか。」という課題に答えを導き、論文として公表する。令和２年度の作業を通して、問いに対する仮説が構想できているので、それらを検証していく予定である。
同時に、医療供給と福祉供給のハコについて、「①なぜ、制度創設当初、福祉施設に医療機能を持たせようとする議論があったにもかかわらず、それは棄却されたのか。②なぜ、福祉に医療機能を持たせる抵抗は大きいのか。」という研究実施計画に記載した課題にも対峙し、結果を論文として公表する。
上記の作業を通して、戦後日本において病院の福祉施設的利用を促し、福祉の予算や機能を医療へ傾倒させる政策が指向される背景にある構造を最終的には究明する。この構造を具体化することで、福祉はおざなりに病院医療に偏重してきた戦後日本の政策の指向性をいかにシフトさせていくかに関わる政策的示唆を提示したい。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
令和２年度はCovid-19感染拡大の影響で、資料所蔵先に入館できなかったり、聞き取り調査がしにくい状況であったため、次年度使用額が生じてしまった。
令和３年度は残額を使用するため、文献複写サービスを利用したり、Zoomを利用して聞き取り調査を実施するなどして、令和２年度にできなかった調査を進めていく計画である。
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