研究課題/領域番号 |
18K13002
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
田中 紗和子 日本福祉大学, アジア福祉社会開発研究センター, 客員研究所員 (90732850)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 関係性 / 障害 / 作業 / 地域 |
研究実績の概要 |
本研究は、障害と開発の視点から「排除は個人の能力ではなく人々の関係性の問題である」という問題意識のもと、障害者を含む地域社会における人々の関係性および、その関係性の変容を導く諸要因を質的研究により明らかにすることを目的としている。 平成30年度は、方法論および分析枠組みを検討するための文献調査を行った。 文献調査:人と人との関係性および関係性の変容を導く諸要因を分析する視点および介入の方法論を検討している。具体的には、ソーシャル・キャピタルとしての人々の関係性の分析枠組みとして「作業」概念に着目した分析枠組みの構築を試みている。ここで扱う「作業(Occupation)」とは、リハビリテーションの一職種である作業療法(Occupational therapy:OT)の分野で用いられる概念である。作業が人々の心身機能に及ぼす効果について、また、個々が行う作業の意味についての研究は数多く為されている。その中で、作業が人々の関係性に与える影響ついても言及されているが、心理的な効果や治療者と患者の二者関係について論じられることが多く、より多様な関係性や、関係性について深く踏み込んで論じられている研究は少ないことが確認できた。 フィールド調査:本年度は、治安悪化や研究者の所属変更のため、主調査地ニカラグアでの調査は実施することが出来なかったため、予備調査として、これまで関係のあった千葉県、福島県のフィールドにおける手工芸グループや食事会といった作業を通じたインフォーマル活動における参与観察を実施した。具体的には、1)作業を通じたどのような関係性が存在するのか、2)そこで築かれた関係性や経験が日常生活という文脈の中でどのような意味を持つのか、3)ポジティブな関係変容につながる作業(介入)にはどのような要素が含まれるのかといった点に着目しながらフィールドノートに記録を蓄積している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画以上に研究枠組みの構築に時間がかかっており、平成30年度は当該研究にかかる学会発表および論文の執筆を進めることができなかった。 また、体調不良や所属の変更、主調査地ニカラグアの治安悪化も重なり、計画していた調査を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の研究を実施する。 1)作業と人々の関係性に関する外国語文献、場の議論に関わる文献について先行研究の検討を継続する。 2)作業と人々の関係性についての方法論にかかる理論的考察および分析枠組みの検討を進める。 3)作業療法系、社会開発系、地域福祉系の研究会や学会の議論、論文執筆にて、研究枠組みを確立する。 4)現地調査の準備(調査計画立案、インタビューガイドの作成)と実施。分析枠組みに基づき、調査結果の分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、フィールド調査地ニカラグアの治安悪化、所属変更などにより現地調査が実施できなかったため、現地調査にかかる費用について次年度使用額が生じた。次年度は、現地調査が実施できる見込みであるため、調査費用として計上する。
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