研究課題/領域番号 |
18K13003
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
畠中 亨 帝京平成大学, 健康医療スポーツ学部, 助教 (70750818)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公的年金 / ナショナル・ミニマム / 最低賃金 / 貧困 / 格差 / 社会保障 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、最低賃金の引上げが公的年金の給付と財政状況に与える影響を量的に推計することである。今年度は公的年金に関する最新の政策動向として、2020年に行われた制度改正の内容と、その高齢者貧困問題への影響に関して研究を行った。 現在、全世代型社会保障の実現に向けた社会保障全体の制度改正が行われており、公的年金に関しては2020年5月に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が制定された。この改正は、2012年に行われた改正の一部を発展させ、厚生年金への高齢者や短時間労働者の加入拡大を図るものである。この改正の背景を検討した結果、年金財政の安定化と短時間労働者を厚生年金に加入させることで、将来の高齢者貧困問題の抑制を狙ったものであることが明らかになった。その一方で、加入拡大の範囲は限定的であり消極的な改正に留まることも指摘した。 また、高齢者貧困問題の発生要因について分析した結果、老後に貧困に陥りやすい短時間労働者は生涯未婚率が高く、単身高齢者となることもその大きな要因であることが明らかとなった。そのため、厚生年金への加入拡大だけでは高齢者貧困問題の抑制効果は限定的であることを指摘した。 研究課題の成果として、「『全世代型社会保障』と2020年年金制度改正」『労働総研クォータリー』No.117、「多様化するライフスタイルと年金問題」『住民と自治』No.696の2点の研究論文を執筆し掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ・ウィルス感染拡大に伴いオンライン授業の実施等への対応のため、本研究に必要なエフォートを確保することが困難であった。さらに厚生労働省「賃金構造統計基本調査」のデータを使用したシミュレーション分析を行う予定であったが、新型コロナ・ウィルス感染拡大問題のためにデータの目的外利用申請を行う手続きができず、本年度中にこの分析を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の状況を鑑みて、研究期間を一年延長することとした。次年度は、新型コロナ・ウィルス感染拡大問題の収束が確認され次第、厚生労働省「賃金構造統計基本調査」のデータの目的外利用申請に係る手続きを実施しデータの入手をしたうえで、最低賃金の引き上げが年金額分布に与える影響に関するシミュレーション分析を行う予定である。ただし、新型コロナ・ウィルス感染拡大問題の今後の状況次第では、予定した計画を完遂できない可能性も考えられるため、状況に応じて研究方法を一部変更して実行することも視野に入れて研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
厚生労働省「賃金構造統計基本調査」のデータを目的外利用申請により入手する予定であったが、新型コロナ・ウィルス感染拡大問題のために必要な手続きを行うことができず、これにかかる費用を次年度に使用することとした。また、新型コロナ・ウィルスへの感染予防のため学会・研究会等への参加をすることができず、次年度に予定を変更して旅費を使用することとした。
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