研究課題/領域番号 |
18K13007
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
西田 ちゆき 法政大学, 現代福祉学部, 助教 (90773010)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 法人後見 / 人材育成 / 財政 |
研究実績の概要 |
法人後見実施団体が継続して運営できる要件について、設立2年目のNPO法人の運営委員会・理事会に参画した。通常NPO法人運営の共通する問題・課題とされるのは人材と財政の側面であるが、その2点について、成年後見を中心とする事業展開において独自の課題の詳細が明らかになった。 第一は人材についてである。後見業務は利用者の生活全般、特に財産を預かる業務であることから、各ケースの担当者については、金銭管理意識や障害者に対する価値・倫理観など、その適性を厳しくチェックしなければならない。参画している組織では、「対人援助の国家資格保有者」であることを最低要件にしているが、実践の質にバラつきがみられた。特に、障害者の意思決定支援の際のアセスメントとその対応が不十分な事例が気になった。 また、事務局の人材育成も課題がある。後見業務は家庭裁判所を始め公的機関への提出書類の作成をいかに的確かつ効率的に進めるかが鍵を握る。全体の流れを把握しつつ、事務処理に当たれる人材の育成が重要であることが明らかになった。 第二の財政面について、後見業務は社会の状況に影響されることなく見通しが立てられる事業であることが分かった。研修による普及・啓発回数は減ったものの、コロナ禍に関係なく相談件数が伸び続け、設立後2年で19件の受任に至った。ただ、第一に後見報酬が法人に入るのは受任の翌年であること、第二に法人運営に経費がかかること、第三に人件費に使うことができる助成金が少ないこと、など法人運営に関する財政的な問題・課題は山積している。 人材育成と財政の安定は車の両輪である。今後、法人の3年目の展開も含めて研究成果をまとめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍ではあったが、法人後見の事業は中断することなく参画できた。他団体の調査はできなかったが、法人運営の実際について検討が可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
参画している組織の3年目の事業展開の分析も加え、法人後見実施団体の運営について、以下の点について、できるだけ詳細な情報を分析・調査していく予定である。 第一に人材育成についてである。まず、ケース担当者の発掘、初任者研修、スーパービジョン、一般研修の内容とその効果、留意点についてまとめる。加えて、事務局運営スタッフの育成についてもそのプロセスと課題についてまとめる。 第二に財政についてである。法人後見実施団体が内閣府に提出している活動計算書と事業報告書から、受任件数やその他の事業展開を整理し、継続性について財政面から分析する。 第三に10年以上継続する法人後見実施団体の代表経験者や責任者に対して、法人運営の継続に必要な要件に関するヒアリング調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で移動が制限されたことで、調査が十分できなかった。今年度は調査内容の精査・分析を行うため、法律や財政・税務の専門家から法人運営に関する情報収集と報告書を印刷物にする費用として支出したい。
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