NPOによる法人後見実施団体の調査を行い、継続的な運営に必要な要件を抽出、検討を行った。また、NPOによる法人後見実施団体の運営に直接的に関わり、発足から3年間の運営の問題・課題の整理を行った。調査結果として、NPO法人の運営には常につきまとう財政的な問題と担い手となる人材確保・育成が、法人後見実施団体でも共通課題であった。 財政面では、事務所家賃を含め、事務管理費の捻出が課題である。例えば、成年後見の事案を60件以上受任すれば、なんとか事務職員を雇用することができる。担当者の報酬額をいくらに設定するかによるものの、1人平均約30万円弱の後見報酬を得たとしても、事務管理費に十分な資金を確保するまでには至らない。 人材面では、法人後見の運営にどのような資格やアイデンティティを持つ人々が関わっていくか、いくつかの類型に分けることができた。ひとつは専門職による法人である。福祉や法律の国家資格を持つ人材が集まって活動する法人は担当者に任される範囲が広く、年間数回程度、法人内でスーパービジョンが行われていた。また、当事者の親(主に障がい分野)が中心の法人は、運営を担う親の高齢化が課題であった。次世代の親はパート勤務を含め仕事を持っている割合が高く、引継ぎが問題になっていた。市民後見人受講後等の有志による法人は様々な職歴を持つ人材が集まっているメリットもあるが、対人援助に関する経験・知識も含めたマニュアルによる共通理解の促進が重要であることがわかった。また、3年間の法人運営から、受任件数が多くなるにつれ、事務職員や担当者の雇用に関する労務管理を検討しなければならない。 法人後見実施団体にとって、財政面の問題は受任件数を増やし、事務管理費を工夫すれば継続的な運営は可能であるが、人材面の問題は設立当初からビジョンを持って行動に移していかなければ立ち行かなくなる重要な課題である。
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