本研究の目的は、介護期間の長い家族介護者の方が精神的健康度は高く、患者の社会的行動障害にも対応できていたという研究者自身の先行研究の結果を踏まえ、全国の外傷性脳損傷家族会の代表者もしくは、家族会会員からの相談業務を担っている家族介護者に対してインタビュー調査を行い、外傷性脳損傷患者の社会的行動障害への対応方法を明らかにすることである。13名の研究協力者に対してインタビュー調査を実施し、研究計画書通りに質的な分析を実施した。それらの研究成果を2019年11月に開催された第43回日本高次脳機能障害学会学術総会において報告した。成果の具体的内容として、インタビュー調査から、高次脳機能障害患者と家族にかかわる諸問題,家族会の在り方、医療・教育・行政機関への要望など、様々な貴重で有益な談話内容を得ることができた.それらの得られたデータから,特に社会的行動障害への対応方法に関する内容のみを一まとまりとし、KJ法を用いて分類した。結果「個々の立場での対応方法の提案」「本人のやりたいことの開発」「家族会を含む社会資源の活用」「家族や支援者間での役割分担」「社会的行動障害に対する正しい知識の獲得」「オリジナルな対応方法の提案」などが明らかになった。これまで明らかにされていない高次脳機能障害患者の呈する社会的行動障害への対応方法ならびに患者家族が最も必要とするであろう具体的な情報などに関する重要な知見が得られた。2020年度はインタビュー調査の継続を予定していたが、年度初旬からの新型コロナウィルスの蔓延により、インタビューの継続は困難となり、2021年度は補助期間の延長を申請したが、感染状況は変わらず追加インタビューは実施困難であった。そこで2022年度、投稿論文の精緻化を目的に再延長を申請し承認を得た。
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