研究課題/領域番号 |
18K13015
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
黒宮 亜希子 吉備国際大学, 社会科学部, 准教授 (50435038)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生活支援サービス / 地理情報システム(GIS) / 可視化 / 中山間地域 / 地域福祉 |
研究実績の概要 |
急速に過疎化が進む中山間・離島地域における地域包括ケアシステム、その中核となる「生活支援サービス」についてオープンデータの活用および現地における社会調査を基に、「地理情報システム(以下GIS)」を用いてその情報を「可視化する」ことが本研究の目的である。地域包括ケアシステムの基盤となる生活支援サービスは各地域に多数点在してはいるが、それらに関して情報の整理が十分出来ているかという点では依然として疑問が残る。特に、元々社会資源の総量が限られている中山間地域等における、生活支援サービスの量(場合によっては質)の情報をGISにより可視化することで、各市町村において配置が進められている、生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)らが行う地域アセスメント、さらには、対象者(要援護者等の)との間の社会資源のコーディネートを行う際に有効な一つの手法を開発することまでを狙いとしている。 以上の研究目的に基づき、研究計画2年目(2019年度)には、①社会福祉実践において容易に援用可能な地理情報およびGIS活用の提案を行った。特に食料品アクセスや災害支援等の具体例を取り上げながら、地理情報を用いた地域分析の可能性について検討した。次に、②岡山県内の市町村(X市を中心に)を対象として、GISを用いながら、社会インフラを含む、社会資源の基礎的な可視化及び整理を実施した。最後に、③生活支援コーディネーターに関する丹念な先行研究レビューを実施し、特に地域福祉に関わる専門職が今後地理情報を積極的に扱うことのメリットやその課題について探った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査よる情報収集作業に遅れが出ている。理由としては世界的に急速な感染拡大が見られたコロナウイルス(COVID-19)の影響により、特に2020年2月以降、学外調査や研究出張が総じて困難になったことが最大の要因である。しかしながら、オンラインで収集が可能なオープンデータを活用とした研究を進めることで、複数の基礎的、準備的な研究の蓄積が進んだ。研究計画2年目である2019年度においては大きく以下4つの研究成果が得られた。 (1)生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)に関する先行研究レビューを論文(和文)にまとめた。これにより、地域に点在する社会資源のコーディネートおよび開発等を行う業務において、地理情報を用いた地域アセスメントの可能性が示された。 (2)岡山県X市(中山間地域)を対象として、GISを用いた基礎的な社会資源の可視化に関する成果を論文(英文)としてまとめた。 (3)岡山県X市(中山間地域)に関する、「食料品アクセス」に関して取り上げた。簡易なGISソフトを用いて、市内の食料品アクセス困難者の分布に関する可視化作業を行い、論文(和文)にまとめた。 (4)オープンデータを社会福祉実践においていかに活用するかという視点から、「jSTAT MAP(地図で見る統計)」を用いた地域分析を行い、論文(和文)として発表を行った。これにより、社会福祉実践における地理情報の活用とその可能性について提案することが出来た。以上の成果に基づき、多様な地理情報システム(GIS)の種類と活用法、特に地域福祉分野における今後の汎用性や可能性がより具体化された。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画3年目である本年度(2020年度)の研究計画は、具体的に次のようである。 (1)研究計画2年目(2019年度)に一定の成果が得られた岡山県X市(中山間地域)に関する社会資源の可視化作業について、今後、コロナウイルスの影響が収まった段階で、現地調査を行う。その上でGISを用い、生活支援サービスの量を、人口密度や高齢化率と重ね合わせながら可視化する。これにより、X市の今後の食料品アクセスや交通インフラの維持、ならびに社会福祉に関連する社会資源の安定的充足の検討も可能となる。 (2)岡山県Y市(離島を含む地域)においてこれまでに収集した、介護予防教室ならびにふれあい・いきいきサロンの情報に関して、今後さらなる現地調査を継続する。その理由としては、現段階で得られているデータは地理的情報ならびに基礎的なサービス内容に限られているため、今後コロナウイルスの影響が収束した段階で、詳細な現地調査(岡山県Y市地域包括支援センター、Y市市町村社会福祉協議会を中心に)を進めることを目標とする。 (3)上記(1)(2)岡山県内の2市町村の生活支援サービスの質・量の可視化作業の成果に関して、研究発表ならびに研究論文として発表を行う。特に、岡山県X市に関する研究成果は、第68回日本社会福祉学会秋季大会(2020年9月予定)においてオンラインによる研究報告を予定とし、準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は大きく次の2点である。 1点目の理由としては、コロナウイルス(COVID-19)の影響により、2020年1月~3月に予定していた研究会、現地調査、国際学会等が総じてキャンセルならびに延期となり、旅費の支出が見送られためである。 2点目の理由は、研究2年目(2019年度)に購入を予定していた地理情報の解析ソフト、Arc GIS Desktop の購入を見送ったためである。現在、地理情報の基礎的な整理、可視化作業については、他のGISソフト(地図太郎およびQGIS)を用いて試行を行っている。これらの作業が十分成果を上げた段階で、さらなる高度な分析を実施する。そのため、研究最終年(3年目)である2020年度にArcGIS Desktopの購入および使用を予定としている。
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