本研究の目的は、人口減少・過疎化が急速に進む、中山間・離島地域における地域包括ケアシステム、その基盤となる「生活支援サービス」に関して、国や自治体により公表されたオープンデータ、ならびに現地での社会調査を通じて取得したデータを基に、地理情報システム(以下、GIS)を用いて可視化することである。 本研究は、特に、過疎地域がそれぞれ有する生活支援サービス情報を、GISにより可視化することで、生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)ら、地域を基盤として社会福祉実践を行う専門職が行う「地域アセスメント」に活用可能な一つの手法を提案することまでを狙いとしている。 研究最終年である2021年度(研究4年目)、コロナ禍継続の影響により、本来計画していた複数の現地調査については困難な状態が続いた。しかしながら、上記の研究目的に基づき、2021年度には、主に次の2つの研究を実施した。①地域アセスメントにおいてGISを効果的に使用するための方策を、地域福祉(含む、コミュニティソーシャルワーク)、地域看護学等の視点から整理を行った。特に、地域看護分野では、地域アセスメントにおいて、GISを用いた例が国内でも幾つか散見された。その上で、今後、社会福祉実践においても、GISの日常的な活用が期待されることが明らかになった。②岡山県A市(中山間地域)を対象として、国勢調査等のオープンデータ(二次利用)を用い、GISにより、A市内の地域ごとの人口構造変化と生活支援サービスニーズの予測について検証した。結果として、今後、A市全体としての生活支援のあり方(食料品アクセス問題等を含めた)や、社会資源の分配・再配置等に関する必要性が明らかになった。
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