研究課題/領域番号 |
18K13018
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研究機関 | 尚絅大学短期大学部 |
研究代表者 |
竹下 徹 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90610006)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アクセシビリティ / 保育所 / 保護者 / 子育て支援 / 保護者支援 / ソーシャルワーク / 保育 / 保護者に対する支援 |
研究実績の概要 |
本研究では、保護者が保育所の保護者支援にアクセスする際、それを阻害する要因と構造を突き止め、保育所の保護者支援が有効に機能するための相談支援システムについて明らかにすることを研究の目的とするものである。 こうした研究に着手する理由については、保護者の子育てに関する不安や悩みを保育所側にあげにくい要因が解明されれば、保育所の相談支援へアクセスする力が高まり、虐待ハイリスク家庭の把握とリスク低減にもつなげられる可能性を帯びている。 研究1年目は保護者支援で用いる「アクセシビリティ(接近性)」の概念化を図ることを研究課題に設定し、研究を行った。保育分野におけるアクセシビリティの概念化のために、保育所における保護者支援の先行研究をレビューし、今日の保育所の保護者支援の全体的研究動向と課題、そして支援方法論上の研究課題を明らかにした。 とくに保育所側の保護者が抱える子育てニーズ把握促進のためには、保護者のアクセシビリティを高めることが重要となるが、現時点において保育分野で保護者のニーズ把握やアクセシビリティをテーマに扱う研究は確認できず、こうした類の研究の活性化が今後の課題として提起されるものである。なお、この研究成果は日本保育学会、日本保育ソーシャルワーク学会において発表している。そして、保育所の保護者に対する支援方法論上の課題が明らかにされたことで、保護者支援で用いる「アクセシビリティ(接近性)」の概念化を図るにあたっては、保育以外の社会福祉分野で行われているアクセシビリティに関する先行研究の成果と保育所の保護者に対する支援の特性を組み合わせて分析する必要性が確認された。現在、保育以外の社会福祉分野で行われているアクセシビリティに関する先行研究越智あゆみ、李恩心、久保英樹の研究成果と保育所の保護者に対する支援の特性を整理し、論文としてまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目は保護者支援で用いる「アクセシビリティ(接近性)」の概念化を研究課題として設定したが、概ね順調に進展しているといえる。当初の1年目の研究計画では、保護者支援で用いる「アクセシビリティ(接近性)」の概念化についての論文作成を完了する予定であったが、保育所における保護者支援の研究動向と課題に係る文献収集に相当の時間を要してしまったことで、論文執筆が1年目に完了できなかった経緯がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目については、保護者が保育所の保護者支援へアクセスする際の阻害要因及び促進要因を明らかにするため、インタビュー調査を実施する計画を立てている。インタビュー調査は、保育所を利用する保護者を対象に半構造化面接を行い、保育所への相談のしやすさ及びしにくさについてデータを得る形にしている。 また調査対象者の具体的な選定にあたっては、熊本市保育連盟(熊本市内の私立の認可保育所が加入する組織)並びに熊本県保育協議会(熊本県内の公私立の認可保育所【熊本市内の私立を除く】)が加入する組織)からそれぞれの組織に加入している保育所のリストを本研究者に提供してもらい、そのリストより無作為に抽出した保育所にインタビュー調査を依頼し、調査対象者に同意を得た後、インタビュー調査を実施する。なお当初福岡県内の保育所を利用する保護者を調査対象として想定し内諾を得ていたが、インタビュー調査実施に係る内諾辞退の申し入れがあったため、熊本県内の保育所を利用する保護者を対象として研究を行うこととする。調査内容については、保育所へ子育て等に関する相談をしたことがある経験や相談することを控えた経験など、インタビューガイドに基づき調査を進めていく。調査の実施予定期間は2019年5月1日から2019年6月30日までである。 研究3年目は2年目の調査で得られた保護者が保護者支援へアクセスする際の阻害要因と促進要因をもとに保護者のアクセシビリティ構造を明らかにし、それを踏まえ、保育所の保護者支援が有効に機能するための相談支援システムについて検討を行う。 そして、研究1年目と2年目を踏まえ、保護者のアクセシビリティの構造と構成要件を明らかにし、保育所の保護者支援にアクセスできていない保護者に対する新たな援助機能の考察を行い、保育所の保護者支援方法のあり方について提起する計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究1年目に人件費・謝金を計上していたが、特に活用する必要性は生じなかった。研究2年目は、調査実施を計画しており、そのための調査票発送業務など、人件費・謝金の支出が必要になると思われる。したがって当初研究2年目に必要となる諸費用とあわせ、使用する計画である。
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