研究最終年度となる3年目は、A県内の保育所を利用する保護者618名を対象に、保護者が保育所の相談窓口にアクセスする際の阻害要因と促進要因をつかむための実態調査を実施した。テキストマイニングの手法を用い、回答内容の分析を試みた結果、相談アクセスの阻害要因を構成するクラスターは6つ、そして促進要因を構成するクラスターは7つ抽出された。 これら抽出されたクラスターを踏まえ、保護者の相談アクセスが向上していく条件として「子どもを媒介とした日常のコミュニケーションを通じ構築する保護者と保育者の関係性」「保護者が気遣いしない相談体制づくり」「不測事態下での相談機会の確保」の3つが提起された。 以下、改めて本研究の目的に照らし合わせ、結論を提示したい。 保育所が設ける相談窓口に保護者がアクセスを強め、保育所が実施する保護者支援が有効に機能するには、保育所が設定する相談支援システムに、次の3つを組み込む必要性がある。1つ目は、日常の保育業務において保育者は保護者に対し、その日あった子どもの様子や出来事を伝える機会を設けておくこと、2つ目は保護者からの相談窓口は担任保育士だけでなく、主任保育士や副園長、園長といった複数の窓口を開設しておくこと、そして3つ目が今回コロナ禍のような保護者からの相談に制限が加わる不測の事態下においては、改まった個別の相談機会を定期的に確保しておくこと、である。こうした相談支援体制が整備されることにより、保護者側からの相談アクセスは強まり、保育所側は保護者が抱えるリアルニーズを把握し、効果的な支援を保護者に届けることができる可能性は高まると考えられる。
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