研究課題
最終年度(4年目)は、3年目に試料調製した「①貯蔵による成分プロファイル変化の魚種差の解析」及び昨年度に前倒し実施した「②加熱調理による成分プロファイルへの影響」の未実施部分を行った。まず①については、5℃で0~28日間貯蔵したマサバ、サンマ、シロサケ、マガレイ、サクラマスの5種を使用した。検出された成分を説明変数、貯蔵日数を応答変数にし、OPLS回帰分析を行った。魚種差に依存しない解析方法の構築を目的に、5種すべてのデータでOPLS回帰分析に供した。その結果、魚種共通の有意な予測モデルが構築された。特に重要な成分をVIP値(重要変数度)から探索したところ、プトレシンやフェニルアラニンなどが抽出された。これらの結果は、2年目に実施したマダイをモデルにした実験結果と一致しており、本方法が様々な魚種に適応可能であることが示唆された。続いて②については、3年目に「食品衛生学的な殺菌を目的とした条件での加熱による影響」を検討し、未加熱試料と加熱試料との間に有意な成分プロファイル差が認められなかったことを確認した。そこで最終年度は、成分プロファイルが変化する加熱閾値を把握することを目的にブリ、シロサケ、スケトウダラ、ニシンの普通肉を試料とし、100℃で0~60分間蒸し加熱した。階層的クラスター解析の結果から未加熱試料と完全に区別するためには60分間程度の加熱が必要であることが明らかになった。さらに応答変数を加熱時間にしたOPLS回帰分析で、いずれの魚種でも時間依存的な成分プロファイル変化が確認され、各魚種で様々な成分が加熱で増減したが、特にグリコール酸は、本研究で使用したすべての魚種で共通して増加した。このような成分は魚肉の加熱履歴を反映するマーカー候補である。以上、本研究によって新たな魚肉の品質評価法として提案したGC-MSメタボローム解析手法の有効性が確認できた。
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