食物アレルギーに悩む患者は多く、幼児期や成人期で新たに発症するものとして果物があげられる。原因食品の中でもバナナとリンゴは安価で通年入手しやすく、離乳食や給食での出現頻度が高い。生食のほかケーキやジュースに加工されることが多く、種々の加熱法が施される。加熱により一部の抗原が低下するといわれているが、実際の調理事例に当てはめた報告は少ない。そこで菓子類を想定し、加熱条件を変えて調製したバナナ及びリンゴと加工品としてジャムを調製し、低アレルゲン化と抗酸化性に及ぼす影響について検討した。 市販のバナナを5mm厚さの輪切り、リンゴは5mm厚さのいちょう切りにした。未加熱(生)を対照にフライパンによる板焼き加熱法、オーブン加熱法、蒸し加熱法、電子レンジ加熱法とした。これら加熱法別試料の重量変化率、糖度、テクスチャー、及び化学発光法による抗酸化能を測定した。また試料中のたんぱく質を抽出し、電気泳動分析による分子量分布から、加熱条件別の抗原の変化を各々比較した。 バナナの糖度は、重量変化率が大で濃縮されているオーブン加熱法で高くなった。抗酸化能は、未加熱に対し焼き加熱法とオーブン加熱法で有意に高く、これは加熱によるメラノイジン生成が多く生じたことが原因と考えられた。電気泳動分析の結果、電子レンジ加熱法で全てのバンドが消失しその他の加熱法でもバンドが薄くなり、加熱によるアレルギーの低減化の可能性が期待できた。 ジャムでは未加熱(生)を対照に、糖度とレモン果汁の添加量を変えて鍋と電子レンジで加熱調理した。抗酸化性は生よりも加工することで高くなる傾向が見られた。テクスチャー測定により、加工品とすることで凝集性、付着性が上昇しており、口腔内での粘着きが想定される結果となった。いずれの加工条件も対照に比べて電気泳動分析ではバンドが薄くなり、特に鍋加熱で高糖度の試料に低アレルゲン化の可能性が示唆された。
|