研究課題
食品成分が調理や保存、生体内の消化吸収を経て生じる化合物にはヒトの健康増進に有用な機能を有するものが見出されている。例えば調理中に生じるメイラード反応では、食品を特徴づける色素やフレーバー、呈味成分が生成されるだけではなく、最終生成物であるメラノイジンがin vitroでは抗酸化作用が、in vivoでは血糖値上昇抑制作用や食物繊維様作用、ピロリ菌の生育阻害などの効果を示す。調理や保存、生体内の消化吸収を経て生じる化合物は食経験があるため消費者に受け入れやすく、食品の品質や機能の向上に利用できる。このような化合物のさらなる機能解明や食品利用に向けては、ヒトにとって安全な方法で効率よく供給するシステムが必要である。申請者は電極酸化をキーステップとした種々の化学反応の開発および解析を行ってきた。本手法は化学試薬が不要でありかつ電位制御により目的化合物を選択的に酸化できるため、“酸化”を伴う食品成分の反応を効率的に行い、かつ安全に生成物を供給できる。本研究ではポリフェノールの酸化に伴う反応に着目し、その生成物を電極酸化により効率的かつ食品利用に適した方法で供給するシステムを構築する。さらに、その生成物の生理機能や生体利用性を検証する。食品成分が調理や保存、生体において構造的に変化して得られる化合物は、その存在は知られているものの機能に関しては知見が乏しいため、本研究の成果は食品の新たな機能の理解につながる。
2: おおむね順調に進展している
食品成分の酸化によって得られる生成物を、効率的かつ安全に供給するシステムの構築に向けてモデル反応を用いて検討を進めている。モデル反応としてポリフェノールのカップリング反応を採用した。本反応で得られるカップリング生成物は痛風の予防効果があると報告されている。本年度は、昨年度までに得られたモデル反応の生成物を用いて生体利用性を検討した。この生成物は腸管から吸収され、目的の器官に移行して機能することが期待されているため、まず、腸管からの吸収性を検討した。ヒト小腸モデル細胞となるCaco-2細胞を用いて透過性試験を行ったところ、カップリング生成物が管腔側から基底膜側へ移行することが確認された。この生成物は他のポリフェノールと同様に吸収性は必ずしも高くはないものの、小腸から血中へ移行することが示唆された。
引き続き、モデル反応系の条件最適化を図りつつ、本系の拡充を目指す。すなわち、調理や保存、生体内での消化吸収を経て生成する、様々なポリフェノール化合物が本手法を用いて効率的に得られるかを検討する。また、得られたポリフェノール化合物を用いて各種アッセイを行うことでその利用性や機能性を明らかにする。
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Food Science and Human Wellness
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