研究課題/領域番号 |
18K13024
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
竹田 志郎 麻布大学, 獣医学部, 講師 (40710223)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 野生動物肉 / 食素材 / 機能性 / 乳酸発酵 / 動物性資源 |
研究実績の概要 |
近年、野生動物による農林被害や人的被害が増大しており、野生動物との共生関係の再構築が必要である。その方策として、野生動物肉(ジビエ)を食資源として有効利用することが望まれている。本研究ではジビエの食素材としての生理活性機能として抗酸化活性とアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)阻害活性およびビフィズス菌増殖促進作用に関する評価を行い、その有用性を見出すことを目的としている。 平成30年度は野生動物肉として鹿肉と猪肉を用い、加熱消化酵素分解物による抗酸化性とACE阻害活性について食肉との比較を行った。75℃加熱後、ペプシン、トリプシンおよびパンクレアチンにより処理した各種サンプルをSDS-PAGEおよびゲルろ過クロマトフィーに供試したところ、ペプチドと推定される低分子が生じていることを確認した。各加熱消化酵素分解物をDPPHラジカル消去法とORAC法により抗酸化作用を評価した。その結果、鹿肉の加熱消化酵素分解産物の抗酸化作用は豚肉、牛肉および猪肉よりも有意に高いことが分かった。また、ACE阻害活性についても同様に、鹿肉の加熱消化酵素分解産物は有意に高いことが認められた。 一方、鹿肉の消化酵素分解物のビフィズス菌増殖作用について培養法により評価した。その結果、供試した6菌種の標準菌株のうち、Bifidobacterium (B.) breve、B. longum、B. infantisとB. animalisにおいて著しい菌数の増加が認められた。これらのことより、野生動物肉である鹿肉は食素材として有用な機能を有していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に計画した実験を行い、サイズ排除クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーにおける分画、および分画試料における抗酸化活性およびACE阻害活性成分の評価に時間を費やした。そのため、鹿肉酵素分解物の抗酸化活性およびACE阻害活性成分の同定には至っていない。現在、サイズ排除クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーで分画を終え、LC/MS解析を行うところである。次年度、鹿肉の抗酸化活性ならびにACE阻害活性に寄与する成分の解明ができる予定である。 一方、ビフィズス菌増殖作用の評価については、鹿肉酵素分解物にビフィズス菌増殖促進作用が認められた。さらに菌種間でその作用の違いが認められている。従って、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、鹿肉の消化酵素分解産物による抗酸化活性とACE阻害活性の活性成分の解明に向けた分析を行っていく。高い抗酸化活性とACE阻害活性を示した成分の同定ができた暁には、その成分について人工的に合成し、合成物質における抗酸化活性とACE阻害活性能の解析を行う。 鹿肉消化酵素分解成分のビフィズス菌増殖促進作用については、モルカットで調製した試料ならびにサイズ排除クロマトグラフィーより分画した試料によるビフィズス菌増殖への影響について調べる。 また、研究計画調書で記載したとおり、鹿肉を使用した乳酸発酵製品の作出と品質評価について行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
鹿肉酵素分解物の各クロマト分画試料の調製および評価に時間を費やし、質量分析を行うための十分な試料調製ができなかった。従って、LC-MS/MS解析に充てる分の経費を次年度へ繰り越すこととし、次年度の経費と合わせて使用する。
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