研究課題
本研究ではジビエの食素材としての生理活性機能として抗酸化活性と血圧降下作用に関連するアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)阻害活性およびビフィズス菌増殖促進作用に関する評価を行い、その有用性を見出すことを目的としている。平成31年(令和元年)度までに鹿肉の加熱酵素分解産物は食肉(豚肉および牛肉)と猪肉に比べ、高い抗酸化活性とACE阻害活性を確認した。また鹿肉の加熱酵素分解産物はビフィズス菌増殖作用を有することも認められた。さらにACE阻害活性については、主たるペプチド活性成分が含まれる画分の解析とそのアミノ酸配列を決定した。令和2年度(最終年度)は抗酸化活性を有するペプチドの分析と鹿肉を用いた加工製品について検討を行った。鹿肉の加熱酵素分解産物をサイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画を行い、高い抗酸化活性を示す画分を調べ、LC/MS解析に供した。その結果、13種類のペプチドを同定した。現在、検出したペプチドを合成し、それらの抗酸化活性について分析中である。また野生鹿肉は食肉に比べ、衛生的観点から保存性を向上させる加工法が望まれると考え、鹿肉の食用加工法として乳酸発酵の適用性について調べた。発酵ソーセージ用乳酸菌スターターを用い、試験区として鹿肉、対照区として豚肉を用いた発酵ソーセージを作製した。その結果、発酵鹿肉ソーセージは発酵豚肉ソーセージに比べ赤色度が高く、明度が低い色調であった。発酵鹿肉ソーセージの乳酸菌生菌数の増加および水分活性の低下は発酵豚肉ソーセージと同様に認められた。従って、乳酸発酵は鹿肉の有効な食用加工法の一つとして期待された。
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