| 研究課題/領域番号 |
18K13029
|
|---|
| 研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
|---|
研究代表者 |
渡邊 源哉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 研究員 (00782179)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
| キーワード | 食肉 / コク / 官能評価 / 油脂 / 弁別閾値 / 言葉出し |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究は、具体的な官能特性用語を「食肉のコク」を表す科学的な指標として提案することを目的とする。そこで、食肉の「コク」を評価するためのモデルとして「鶏肉エキス」、これに「コク」を付与することが期待される材料として「油脂」を選択した。
前年度までの成果として、鶏肉エキスにおける、市販の油脂Aの弁別閾値が存在する濃度帯を推定することができた。本年度は、推定された油脂Aの弁別閾値付近の濃度帯において、より詳細な識別試験を行った。具体的には、鶏肉を純水で加熱抽出してエキスを調製した後、油脂Aを添加して超音波ホモジナイザーを用いて乳化した。弁別閾値付近の濃度帯において、4種類の濃度の油脂A添加試料を調製し、それぞれについて、油脂Aを添加していない鶏肉エキスとの三点識別を訓練された分析型パネルを用いて行った。結果として、油脂Aの添加濃度と識別試験の正解率のロジスティック回帰分析から、鶏肉エキスにおける油脂Aの弁別閾値が明らかとなった。
続いて、「食肉のコク」を表現する候補となる用語を選択するため、言葉出しを実施した。具体的には、油脂Aを添加していない鶏肉エキス、弁別閾値と同濃度の油脂Aを添加したエキス、弁別閾値の1/3の油脂Aを添加した鶏肉エキスおよび弁別閾値の3倍量の油脂Aを添加した鶏肉エキスを調製した。上記の4種類のエキスを分析型パネルに喫食させ、それぞれについて予備実験により作成した24語からなる味覚表現用語集から当てはまると思う用語を全て選択させた。結果として、上記の鶏肉エキスを表現する用語として、8語が選択された。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、油脂Aの弁別閾値の解明し、食肉の「コク」の評価に用いるモデルエキスへの油脂Aの添加濃度を確立するとともに、経時的優位感覚法(TDS法: Temporal Dominance of Sensations）に供する評価用語の整理およびTDS法の実施を予定していた。しかし、昨年度の初旬においては、新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、パネリストを集めて官能評価を行うことが困難となったことで研究の開始が遅れ、最終的な到達目標であるTDS法の実施まで至らなかった。
|
| 今後の研究の推進方策 |
弁別閾値と同濃度の油脂Aを添加した食肉のコク評価モデルエキスと無添加エキスの官能特性の違いを、試料を喫食開始から感覚がなくなるまで、最も注目を引き付ける感覚を解析する経時的官能評価手法である経時的優位感覚法(TDS法: Temporal Dominance of Sensations）を用いて解析する。これにより、油脂によって生じる感覚の持続性や複雑さを介して食肉のコクに寄与する具体的な感覚要素を明らかにする。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大のため、アメリカで開催予定であった国際会議への参加が取りやめとなり、計上していた海外出張旅費および大会参加費が支出されなかった。また、新型コロナウィルス感染症への対応のため、全体的に研究の進捗が遅れ、消耗品費、論文校正料金、人件費および論文投稿料等が支出されず、次年度使用額が発生した。
消耗品費、論文校正料金、人件費および論文投稿料等は、研究の進捗に合わせて予定通り使用する。海外出張旅費および大会参加費については、「コク」に関する大規模なwebアンケートを追加で実施するために使用する予定である。
|
| 備考 |
農研機構の研究成果情報として採択。後日webサイトにて公開予定。
|
