本研究の目的は、洗浄現象を「汚れ」「界面活性剤」および「水」の相互作用の変化として捉え、溶液のゆらぎを記述するKirkwood-Buff積分から算出した相互作用の変化から界面活性剤の構造と洗浄力の関係を簡易に評価するための解析法を確立することである。令和2年度は、被可溶化物質や共溶媒の種類の影響についても知見を得るとともに、汚れの凝集を伴う洗浄系を想定し排除体積を考慮したモデルの構築を行った。そこで令和3年度は、洗浄性評価系を新たに構築し、得られた結果について前年度に構築したモデルを用いて解析することで、本アプローチの有効性について検討した。 本研究では、微小天秤である水晶振動子QCMを応用することで、物性と速度論的特性を評価できる評価装置を構築した。具体的には、洗浄剤がバルクから表面へ拡散し吸着するプロセスを追跡できるようセルの大きさを設計し、脂肪酸膜を汚れとしたモデル洗浄系を構築した。また、QCMを用いて液相中で測定を行う際、水晶板振動の周波数は、QCMに触れる物質のずり粘度変化の影響を受ける。洗浄素過程の追跡においては、QCMに触れる物質の重量や粘度が刻々と変化するため、既存の解析法を適用した場合、質量変化を過大に評価してしまうことが問題であった。そこで、QCMで得た粘度変化と周波数変化を用いて正確な重量変化を算出する手法を確立し、評価法に用いた。界面活性剤が可溶化した汚れ量を定量し、前年度に構築したモデルを用いて解析を行った。界面活性剤低濃度系においてはばらつきが多くモデルの拡張が必要であったが、高濃度系については本手法の適用が有効であることが確認できた。
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