研究課題/領域番号 |
18K13034
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
田中 美帆 武庫川女子大学, 文学部, 助教 (80802678)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 妊産婦 / 死への不安・恐怖 / 自殺予防 / 発達モデル |
研究実績の概要 |
具体的内容:本研究の目的は,妊産褥期の発達的特徴である子との関係性構築に着目し,死への不安・恐怖の発達モデルを構築し,妊産婦の自殺関連行動との関連を明らかにすることである。令和元年度は,計画に基づき以下の課題に従事した。(1)平成30年度に実施していた妊娠期および産後1年の女性に対する関係性構築経験と死への不安・恐怖に関する横断的質問紙調査のデータ分析を行った。また分析の結果を,19th Europenan Conference on Developmental Psychologyおよび日本心理学会第83回大会において発表した。(2)(1)の結果を受けて,妊娠初期,中期,後期および産後0ヶ月~8ヶ月の女性に対して,関係性構築経験と死への不安・恐怖,対人関係欲求,自殺潜在能力など関する縦断的質問紙調査のうち第1回,第2回を実施し,分析を行った。 意義:死への不安・恐怖に関する先行研究では,本人の死という個に焦点を当てており,関係性喪失への恐怖については十分に検討がなされていない。加えて,妊産褥期を対象とした死生に関する研究は蓄積が乏しく,理論構築に至っていない。しかし,妊娠期は母と子の生命が不可分であること,妊産褥期は胎動および出産・授乳など子との関係構築を短期間で経験することから,本研究では,具体的な関係性構築経験が関係性喪失への恐怖にどのように影響するのかを明らかにし,妊産婦の自殺に関する支援や実践へ応用可能な理論的枠組みの提案を目指すものである。 重要性:妊産婦の自殺について社会的関心が高まっているが,国を挙げた全容把握は始まったばかりであり,妊産婦の自殺関連行動に関する研究の蓄積は乏しい。また,妊産褥期の心身の問題は子どもの心身に対しても,長期的な影響を及ぼす。本研究では自殺関連行動に影響する死への不安・恐怖の詳細な把握を行い,妊産婦のメンタルヘルスケアに寄与し,母子保健対策に資する基礎的資料の提案を目指す点で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の結果を踏まえて、縦断的質問紙調査の第2回までのデータを収集,分析を終了した。すでに第3回の実施についても準備や業者との打ち合わせを完了している。次年度には第3回を実施し,分析結果を学会等で報告する予定である。したがって,縦断的質問紙調査に関しておおむね順調に進展している。他方,縦断的面接調査に関しては縦断的質問紙調査の開始時期を遅らせたため,併せてリクルートを遅らせることになったが,コロナウイルス感染拡大の影響により,病院においてリクルートおよび実施が難しくなった。そのため,総合的にはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和元年度は以下の点について研究を進展させる。(1)令和元年度に実施した縦断的質問紙調査について,随時分析を行い,成果発表を行う。(2)縦断的面接調査の実施方法について検討を行う。(3) 妊産褥期における死への不安・恐怖の発達モデルを構築し,妊産婦の自殺関連行動との関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は縦断調査のうち2回分を行う予定であったが、業者との打ち合わせを密に行ったため、調査開始が消費税増税後になった。そのため増税分の調査実施費用に若干の変更が生じたため前倒し支払い請求を行ったため次年度使用額が生じた。これらは翌年度分と合算したうえで調査実施費用に充てる。
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