令和3年度は平成31年度に実施した大規模郵送調査において回答の得られた4613名に対して,追跡調査をおこなった.社会交流量と抑うつ度,その他に基本属性を収集した,その結果,3111名より回答が得られ,その後,回答に欠損のあった者などを除外し,最終的には,2552名(うち,独居621名)を解析対象者とした. 追跡調査時に軽度抑うつ状態を有する割合は独居32.9%,非独居31.8%であり,中等度抑うつ状態を有する割合は独居11.4%,非独居9.1%であり,独居・非独居で有意な違いは認めなかった.また,ベースライン時の解析対象者(3897名)と比較しても,軽度・中等度の該当割合に大きな違いは認めなかった. 次いで,社会交流水準が豊富な地域に暮らす独居は,独居個人の社会交流量を調整してもなお,抑うつリスクが低いかを検討した.ベースライン時点で回答数が30以上であった35町丁(地域)に暮らす対象者のデータの限定し各地域のベースライン時点の社会交流量の平均値を算出した.独居高齢者を対象に従属変数に追跡調査時の新規抑うつ状態の発生,独立変数にベースライン時点の個人の社会交流量,地域の社会交流量を投入したマルチレベル解析を実施した結果,独居高齢者の軽度・中等度の新規抑うつ状態の発生に個人の社会交流量および地域の社会交流量は有意な関連を認めなかった. 平成31年度に実施した横断研究および令和3年度に実施した縦断研究の知見を勘案すると,学術的問いとして「社会交流量が豊富な高齢者が多く暮 らす地域では,その地域に住む独居高齢者個人においても抑うつ予防効果が高まるのか」に対しては否定的な結果であり,独居高齢者の抑うつ予防を策定する際の「地域づくり方針」としては現時点では従来通り個人の社会交流量や他の抑うつ関連要因に対するアプローチを検討する必要があると考えられる.
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