本研究では、①非出荷用作物の生産量、栄養素量の算出、②地域レベルの非出荷用作物の生産量と食物消費量との関連の解明、③地域レベルの非出荷用作物の生産量と食物消費量との関連の因果関係の解明、を目的とする。非出荷用作物とは自家消費用および贈与用の作物である。今年度は、③を中心に実施した。平成24年度と平成28年度の国民健康・栄養調査および作況調査のデータを用いて、平成24年に長野県で非出荷用白菜の収穫量が増加したことが、長野県民の白菜摂取量に影響を与えたかを推し量った。差分の差分法による分析を実施し、2012年から2016年にかけての都道府県別の変化量の差の分析をおこなった。対照群は長野県以外の都道府県のうち、国民健康・栄養調査の地域ブロックで長野県と同じ関東Ⅱに属する都道府県(群馬県、茨城県、栃木県、山梨県)とした。白菜の摂取量を従属変数とし、年次と各都道府県の交互作用項を独立変数に含めた回帰モデルを作成した。差分の差分法の前提となる並行トレンドの確認については、平成24年以前の都道府県別データを用いることが出来なかったため、代替法として第二の対照群を設けて確認した。一般線形モデルを用いて交互作用項の偏回帰係数と95%信頼区間を算出した。結果として、わずかな交互作用がみられたが、決して大きくはなかった。はくさいの摂取量を従属変数とした場合も、はくさいと漬物の合計摂取量を従属変数とした場合もほとんど同様の結果であった。推定平均値は、長野県と長野県以外のいずれにおいても2012年から2016年にかけて減少しているが、長野県でわずかながら減少幅が大きかった。
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