研究課題
本研究は、発芽玄米摂取による更なる健康増進に貢献する加工法と系統の提案へ繋げるために、以下を目的とするものである。細目1:玄米のGABAが増強される最適な低温発芽処理条件の解明、細目2:発芽玄米のGABAと抗酸化能が維持・増強される最適な加熱処理条件の解明、細目3:機能性が維持・増強される最適条件と当所独自の玄米系統を用いた素材開発細目1では、不快臭が低減する発芽温度条件として12から15℃を採用し、玄米を1から7日間低温発芽処理した後、GABAと関連アミノ酸含量をHPLC法で定量した。結果、GABA含量の増加程度は、7日間処理しても小さく、GABAの基質となるアミノ酸の減耗も小さかった。現在、15℃より高い温度条件を検討中である。細目2では、炊飯温度の影響評価のため、30℃・24時間発芽させた玄米を105から135℃の条件で加圧加熱処理し、抗酸化能をH,L-ORAC法、アミノ酸と糖組成をHPLC法、色差を色彩色差計で評価した。更に、炊飯時間の影響評価のため、105℃一定で40と90分加圧加熱し、上述の指標で評価した。温度評価の結果、水溶性抗酸化能は115℃、脂溶性抗酸化能は135℃、総合値(水溶性と脂溶性)は125℃で最大値を示した。この内、脂溶性抗酸化能は、メイラード反応色とその基質となるアミノ酸との相関がみられたが、還元糖との相関はなかった。一方、GABAとその基質のアミノ酸は、温度間による差はなかった。加圧加熱時間を評価した結果、抗酸化能とGABA含量に差はなかった。以上から、機能性が維持・増強される発芽玄米の炊飯条件は、125℃・40分の加圧加熱が有用と考えられる。細目3では、GABAとその基質アミノ酸含量が多い巨大胚芽系統である2種「16せ226と228」について、予備的に30℃・24時間発芽処理後に最適炊飯条件で処理し、機能性の評価を開始した。
2: おおむね順調に進展している
現在、細目1の低温発芽処理条件の探索実験について追加検討を実施しているが、それ以外は研究計画書に記載の内容をほぼ達成できたため。
玄米の低温発芽処理条件の検討実験では、15から25℃の条件下でのGABA含量と臭いへの影響を評価していく。また、2018年度に明らかにした発芽玄米の機能性が維持・増強する炊飯条件について、抗酸化能の増強機序を分析化学的な手法で解明する。更に、当所独自の玄米系統を用いた素材開発では、低温発芽条件の解明前に、予備的に30℃・24時間で発芽させた育成系統の玄米2種を、最適炊飯条件で加工し、機能性の維持・増強効果を検証していく予定である。
静岡県農林技術研究所試験研究成果の概要集2019年に、以下2点が掲載された。①豊泉友康, 中嶌輝子, 外山祐介, 発芽玄米の炊飯温度の違いが親水性の抗酸化能とGABA含量に及ぼす影響評価, 15-16 (2019年3月)②外山祐介, 亀山 忠, 豊泉友康, 特産ブランド化が可能な特徴的な品種の育成 (高機能性品種), 159-160 (2019年3月)
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry.
巻: 83 ページ: 1-9
10.1080/09168451.2018.1537774