化粧品の一部には、保水性を有する食物由来タンパク、およびその加水分解物が使用されている。これらの化粧品の品質を保ち、安全安心に使用するためには、複数種類のタンパクに対応可能な効率的な定量法や加水分解物の分解度に関する測定法が必要であるが、現在までに利用可能な方法は少ない。本研究では、化粧品原料として鶏卵タンパクに着目し、鶏卵タンパクのうち、卵白アレルゲン4種類(オボムコイド、オボアルブミン、オボトランスフェリン、リゾチーム)に対するLC-MS/MS定量分析法を開発した(MS法)。次いで、生鮮鶏卵や乾燥卵白等の実試料を対象とし、卵白タンパクの50%以上を占めるオボアルブミンの酵素加水分解物の分解度測定に、MS法が適用可能か明らかにすることを目的とした。 本年度は、実試料の酵素加水分解物におけるオボアルブミンの定量について、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC法)や免疫学的手法(ELISA法)と比較しながら、MS法の性能を確認した。その結果、MS法では、酵素加水分解物中のオボアルブミンの希釈直線性が確保されており、その添加回収率は70-120%の範囲内となり良好であった。そのため、MS法は酵素加水分解物中のオボアルブミン定量が可能と考えられた。一方、SEC法やELISA法では、定量が困難と考えられた。MS法を用いて、酵素加水分解後の実試料中の残存オボアルブミンを定量することで、オボアルブミンの分解度の算出が可能である。MS法は鶏卵アレルゲンの分解度の正確な測定法として適用可能であることが示唆された。 今後、他の鶏卵タンパクに対してもMS法の適用性の検証を進め、課題点として残った分解度とアレルゲン性に関する研究を深め、詳細な知見を得ることが重要と考えられる。
|