研究課題/領域番号 |
18K13045
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
森本 洋介 弘前大学, 教育学部, 准教授 (20633613)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学力テスト / カナダの教育 / 透明性 / アカウンタビリティ |
研究実績の概要 |
令和2年度はCOVID-19の感染拡大により海外への渡航が著しく制限されたため、当初カナダ・ノヴァスコシア州での学力テストの状況を現地調査する予定であったが断念せざるをえなかった。その代わりに、本科研の前半の研究成果をまとめる期間とし、佐藤仁・北野秋男編著『世界のテスト・ガバナンス―日本の学力テストの行く末を探る―』のなかの1つの章として「第6章 アメリカと似て非なる学力テストの様相―カナダ・オンタリオ州―」を執筆した。本稿においては、オンタリオ州の州統一テストによるガバナンスの構造的特質について検討している。オンタリオ州は1990年代に州統一カリキュラムを策定し、そのカリキュラムの内容を、中等教育を修了できるレベルで達成しているのか否かを、運営主体である「教育の質とアカウンタビリティに関するオフィス(EQAO)を中心として州統一テストによって評価してきた。州教育省も、教員組合も、子どもの学業の達成を評価することの重要性、とくに教員の日常的な評価(形成的評価)を重視すべきという見解や、学力調査がごく限られた学力の側面の測定にすぎないという認識では一致していた。また、中等教育修了要件である「オンタリオ州中等教育リテラシーテスト」(OSSLT)の通過を目標とした21世紀型スキルを育成することの重要性も互いに認識している。しかし、州政府やEQAOは学校教育のアカウンタビリティとして、州統一テストによって子どもの達成を評価することを主張しているのに対し、教員は、教師の精神的・時間的負荷が大きいこと、民族的マイノリティへの配慮に欠けていることなどを理由に、州統一テスト以外の方法で評価することが必要だと主張する。一般の州民はそういった議論についてあまり理解しておらず、マスコミの情報から、州統一テストを競争やランク付けの装置として理解している傾向があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で説明したように、令和2年度は予定していた研究計画の変更を迫られることとなった。しかしながら、本研究で予定していたカナダの州のうち、3つの州についての学力テストの状況を調査するという計画について、令和元年度までに2つの州については概ね調査を終了し、うち1つの州の状況について成果を書籍の形で公表するに至っている。残り1つの州については令和2年度開始当初の時点で既に担当者と調査日程の調整の段階まで至っており、渡航制限が解除されればすぐに調査を再開できる状態にある。これまで調査した2つの州の状況から、調査すべき内容については概ね設定を終えており、調査さえ実施できれば調査結果を整理するのみである。以上のことから「おおむね順調に進展している。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に調査する予定だったノヴァスコシア州について調査を行う。COVID-19による渡航制限が緩和されれば令和3年度秋に実地調査を行う予定であるが、仮に渡航制限が解除されなかった場合はビデオ会議システムによって現地の担当者にインタビュー調査を行い、現地の状況について聞き取る予定となっている。令和3年度は本科研の最終年度になるため、既に調査を終えたアルバータ州の状況とともに成果報告としてまとめる予定である。なお、オンタリオ州については既述のように成果として公開されたため、成果報告はそれをもって代えることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はカナダ・ノヴァスコシア州で実地調査を行う予定であったが、COVID-19による渡航制限で調査ができなくなった。また同様の理由で研究成果を発表する予定であった学会の大会が軒並みオンライン開催となり、旅費を支出することがなくなった。令和3年度は渡航制限が解除された場合にノヴァスコシア州を訪問するために旅費として使用する予定であり、また学会発表での旅費が生じなくなった代わりに成果報告書の出版費用として支出する予定である。
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