研究課題/領域番号 |
18K13051
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
本所 恵 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80632835)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高校教育 / 学習権保障 / スウェーデン / イントロダクション・プログラム / カリキュラム個別化 |
研究実績の概要 |
本年度は、計画よりも多くの資料収集および学校現地調査を実施することができた。 (1)文献調査からは、1990年代に設置された高校準備課程が、高校入学に必要な学力に到達していない生徒への補償教育としてのみでなく、学習意欲が低い生徒への動機付けや、中退生徒への支援、目標が明確な生徒への個人化プログラム提供の場としても期待されていたことが明らかになった。こうした生徒たちへの対応は共通して、必要に応じた教育課程の個別化であり、最も柔軟に教育課程が編成できるのが高校準備課程だった。義務教育を終えたすべての若者に教育を提供するという高校の理念のもとで、低学力が特別視されるのでなく様々な困難の一つとして扱われ、生徒個々人に応じた教育課程の提供が計画されていたことは重要な特徴だった。 (2)現在の高校準備課程の実際に関する調査として、ウプサラ地区とヨーテボリ地区の高校準備課程行政担当官や校長・教員へのインタビューおよび複数の学校の現地調査を実施した。高校準備課程には、言語、職業、個別、準学科、準備の5コースがあり、各コースは異なる目的や教育課程の特色を持っていた。ウプサラ地区では、高校準備教育をもつ学校間で連携し、各生徒が最適な学校・コースに通えるようにしていた。全国的に、高校準備課程については、この5コースを設定することの他に共通の目標や教育課程基準がなく、各地方自治体や学校の裁量に任されていた。共通の教育課程基準がないことから、教育の質を懸念する声も聞かれた。学校現場では、教育課程の個別化への対応のみにとどまらず、生徒の身体的・精神的健康の問題や、貧困などの社会的問題等、学習面以外の課題への取組みも不可欠であり、多様なスタッフの協働と試行錯誤が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では(1)文献検討を中心に行い、(2)関係者へのインタビューや学校への現地調査については準備を行う予定だったが、現地での長期滞在が可能になったため、(2)もすでに多く行うことができた。ただし、収集した資料の検討・分析および成果発表は次年度に行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に計画以上に収集できた資料・データを用いて、2年目にはデータの検討・分析を行う。その際、必要に応じて追加のインタビューや現地調査を行う。計画通り、3年目には(3)高校教育全体における高校準備課程の役割を考察し、日本の高校教育と比較しつつ具体的な教育課程を検討する。
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