研究課題/領域番号 |
18K13052
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
奥井 遼 同志社大学, 社会学部, 助教 (10636054)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | わざ / 現象学 / 人形遣い / マリオネット / 現代サーカス |
研究実績の概要 |
本研究は、身体を使った「わざ」の稽古場面における参与観察を行い、その習得および創造のプロセスを記述するものである。2019年度の成果は以下の三つの通りである。 (1)フィールド調査:申請書に記載の通り、フランスにおける教育・芸術実践を比較するために、日本の伝統芸能・現代芸術についてのフィールド調査を行った。具体的には、長野県飯田市における国際イベント「いいだ人形フェスタ」に参加し、現代人形劇の動向について調査し、その来歴についての資料を得た(2019年8月)。また、兵庫県南あわじ市の淡路人形座に複数回訪れ、最新の動向を調べるとともに、公演に向けた稽古場面の調査を継続した(2019年11月、2020年1月、2月)。 (2)学会発表:複数の学会で研究発表を行った。国際ワークショップ「Radical Embodied Cognition」(2019年8月)では講演者として、教育哲学会 (同10月)ではラウンドテーブル「臨床現象学」の話題提供者として、国際学会ISEAPではパネル「Skilled Performance and East Asian Wisdom Traditions」の登壇者としてそれぞれ研究発表およびディスカッションを行った。 (3)論文掲載:フランスにおけるフィールドワークの成果として、国立人形劇学校(ESNAM)における授業の参与観察から得られた論考を『近代教育フォーラム』に掲載した。日本の人形浄瑠璃の稽古を現象学的身体論の枠組みで捉えた論考を『現象学年報』に掲載した。また、「わざ」に関する教育学的論考を、教科書『ワークで学ぶ教育学』に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、学会発表・論文掲載を順調に重ねているためである。軸となってきた教育哲学関連学会での活動(発表や教科書の執筆)に加え、現象学をはじめとする哲学、人類学などの社会科学の領域でも発表(予定も含む)が続いており、知的・人的ネットワークが広がってきた。これに加え、パリ大学(Universite de Paris、旧パリ第V大学)との共同プロジェクトも水面下で進みつつある。これは、身体哲学をベースとする、スポーツや芸術活動についての共同プロジェクトであるが、共著本の編集・刊行準備、複数の国際共著論文の準備が進みつつある。他方で、フランス・パリにて行う予定であったフィールドワークについては、新型コロナウイルス感染拡大に鑑み延期した。データ・資料収集については若干の立ち遅れを見るものの、今後の調査で保管できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続きフィールド調査を進め、身体を使った「わざ」の稽古場面における事例を収集する。また、国内外の研究者とも議論を深め、事例を分析するた めの手法を鍛え上げていく。具体的な方策は下記の通りである。 (1)海外調査:現代芸術におけるわざの創発プロセスを明らかにするために、フランスを中心とするヨーロッパの芸術および教育実践に広く目を向け、先駆的な事例に関する資料を収集する。国立学校のみならず、街の子育て施設、劇場、カフェといった場所における事例も調査する予定である。 (2)国内調査:日本国内における先端事例(大阪、京都、淡路島、飯田等)においても引き続きフィールド調査を行い、劇場や芸術祭などを中心に、そのわざの継承・発展のプロセスを記述する。 (3)共同研究の発展:国内の学会シンポジウムの招へいや、国際学会での発表が決定している。それらの機会を活かし、教育哲学や現象学、人類学分野の研究者とのネットワークを広げるとともに、成果を論文に発表する。また、パリ大学との共同研究の成果として、国際共著本を編集・刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2020年3月に予定していたフランス・パリでのフィールドワークを、新型コロナウイルス感染拡大に鑑み断念したためである。本調査については2020年度中に再計画・実施する予定である。 2020年度は、申請書に記載の通り、物品費(データ分析用の機材や記録媒体、関連書籍など)、旅費(上記フィールドワークを含む国内外調査、学会参加など)、人件費・謝金(調査助手、データ分析補助など)、その他(論文投稿にかかる英文・仏文校正費など)を計上予定である。
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