本研究の目的は、到達目標とする見本レポートを執筆するためのプロセス・ライティング指導実践において、実践から得られた成果物および評価活動を調査し、初年次アカデミック・ライティングプログラムにおける効果的な評価システムを構築することである。本調査は、2018年度より開始し、2018年-2020年度は、レポート・ライティング指導のためのルーブリック開発を行った。開発したルーブリックについて教員間の評価差の検証や、採点の困難さに関する調査を行った。また、学生の成果物の特徴に関する調査を経て、ルーブリックを改善するためのポイントを探った。 2021年度は、調査結果データをもとに、ルーブリックを改善し、そのプロセスを論文にまとめて公開した。2022年度は、新規ルーブリックを用いて学生に対する評価調査を行った。その結果をもとに、学生がどのような点に注目するかを明らかにし、教室内でどのように評価活動を進めると効果的か具体的な提案を行った。また本研究課題期間中に新型コロナウィルス感染症が蔓延し、調査機会や学会参加機会が限られるなど、十分な外部調査機会・発表機会を持てない時期があったため、予定を変更し、開発後の評価表の使い方や初年次教育におけるレポート執筆のための科目運営について書籍にまとめて知見を共有することとした。書籍では開発・改良したルーブリックを掲載するだけでなく、複数人教員での運用方法や改善を重ねていく方法についてもまとめた。また本ルーブリックや活動に関わる教材は、編集可能なデータで出版社ウェブサイトおよび研究者のresarch mapにてダウンロードできるよう公開した。編集可能なデータで公開することで、本ルーブリックを各現場の状況に合わせた活用が期待できる。
|