研究課題/領域番号 |
18K13072
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
瓦林 亜希子 都留文科大学, 教養学部, 准教授 (10780249)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フレネ教育 / 子ども主体 / アクティブラーニング / 幼児教育 / フランス / 興味・関心から出発する学び / 自己表現 / 批判的思考 |
研究実績の概要 |
本年度は、コロナ対策により所属する国内の学会や研究団体の大会は中止かオンライン開催となったことから、オンライン開催の際にはできる限り参加した(地域サークルの研究会等も含めのべ20回以上)。そのような困難の中で、仏に直接出向くことは難しいため、せめて国内で子ども主体の教育を実践している学校見学をできる範囲でと考えていたが、秋冬になっても叶わなかった。しかし3月に出張で九州に行くことになり、きのくに子どもの村学園の一つである北九州子どもの村小中学校に見学交渉をしたところ、幸運にも許可を頂けた。コロナ禍にある教育現場の中でも学習者主体の教育を何とか保障しようと奮闘する教員の姿と、子どもたちの生き生きと学ぶ様子を直接確かることができたことは、有意義であった。北九州子どもの村小では、元教育学者であるきのくにの創立者にもお会いでき、現代において体験学習を柱とする学校を設立するに至った歴史や、その意義についてお話を聞けたことは、貴重な機会となった。結局、年度末まで海外渡航は不可能な状況であったが、zoomやメールを通して新たな交流も実現できた。共同研究先である仏ロレーヌ大学LISEC研究所の先生方と日仏の学校におけるコロナ対応について情報交換をしたり、仏国立東洋言語文化研究所内の「アジアの子ども社会研究グループ」の研究会にオンラインで参加したりなど、海外に直接行かずともコンタクトが取れる手段が広がったことは幸いであった。さらに秋以降、山梨県庁と都留市役所のオリパラ担当からの依頼により、在日仏大使館のスポーツ担当外交官の方の都留市訪問の準備に携わった。 3月末に訪問が実現し、氏と都留市民・学生間の交流の通訳の仕事を担った。その際、氏が受けてきた仏での学校教育の経験とその後のキャリアに与えた影響等について、日本と比較しながらインタビューできたことは、私自身の研究にとっても得難い経験となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
三年目は、本来ならば最終年度として研究の総まとめを行うべき年であったが、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大のもと、大学での授業も一部を除いてオンライン授業に一本化された。個人的に担当していた授業の中で、受講生が100名を越す大型講義が前期後期を通して5コマあり、特に前期は慣れないオンラインでの学生対応に夜中まで忙殺され、研究に割くことのできる時間はほとんどないに等しかった。後期は少しずつ慣れも出てきて多少の余裕は生まれたが、それでもzoom研究会への出席などに留まってしまった。さらに当初計画していた、フランスから学習材を取り寄せて購入する予定についても、コロナ禍で国際郵便が不安定な状況になっていることもあり、敢えて避けるに至った。こうした物流だけでなく、国際的な人流についてもコロナ対策のために制限され、実質この一年間海外を訪れることは不可能となり、フランスに渡航して学会発表を行ったり、現地の学校現場を訪問することは叶わなかった。反対に、日本にフランス人研究者を招聘することも実現できる状況ではなかった。以上のような、コロナ禍のもとで手探りの対応が迫られる教育活動の中で、国際的な研究を進めることは困難を極めたことが、本年度の研究遅延を引き起こしてしまった大きな原因である。
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今後の研究の推進方策 |
本来、三年目にあたる2020年度は総まとめの年として計画していたが、研究の進捗がコロナの影響を受け遅れてしまっている。そこで、引き続き可能な範囲内で、日本国内のフレネ教育等の学習者主体の教育を行っている学校現場での調査を行いつつ、同時にその記録のまとめと論文化に着手する。さらに、新型コロナウイルスの感染状況次第ではあるが、フランスへの渡航が可能になり次第、現地での研究調査を行う。特に仏トゥールーズ市内のある私立学校で、幼小中と通してフレネ教育を実践している教育機関があると判明したため、来年度には学校内の見学を果たし、フレネ教育を幼小中と連続して行なうことの意義について分析する。さらにトゥールーズ大学では、本学との留学協定や共同研究の計画もあるため、それらの今後についても直接交渉する。またはもう一つの共同研究先であるロレーヌ大学を訪れ、今後の日仏共同研究の打ち合わせを進めるとともに、市内の公立幼・小・中学校を訪問し、フランスでの教育現場の現状を視察する。また、瓦林が所属している「フランス日本研究学会」において、仏で12月に予定されている学会で、日本におけるフレネ教育の発展と課題について、学会発表を行う予定である。年明けには、本研究の成果と交流の締めくくりとして、南仏で子ども主体のフレネ教育を小学校・中学・高校と継続的に行ってきた3人のフレネ教師たちを日本に招聘し、仏でのフレネ教育実践の歴史と現状について、講演会を行う。もし彼らの都合がつかなければ、仏トゥールーズ大の日本教育研究者を日本に招聘し、日仏に共通する昨今の学習者主体にシフトする教育改革についての講演を行う。こうした今後の研究の推進にあたり、状況に応じてオンラインで日仏を繋ぐ形での講演会や学生同士の交流の実現を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ禍において国際的研究交流を進めることが困難だっために、研究期間の延長を申請した。ウイルス感染状況の収束次第ではあるが、条件が整うようであれば、年明けには、南仏にて子ども主体のフレネ教育を小・中・高校で実践してきた3人の先生方を日本に招聘し、日本の小中高での子どもたちとの交流や、大学での講演とゼミでの研究交流を計画している。万一上記の先生のご都合がつかなかった場合には、仏トゥールーズ大学の日本教育研究者である先生をお招きし、日仏の教育改革についての大学での講演や、都留市内の小中高の学校教育現場の訪問と生徒たちとの交流を考えている。また、本年度の郵便事情の不安定さから断念した、フランス国内で販売されているフレネ教育の学習教材一式については、時間がかかっても次年度中に必ずまとめて購入する予定である。可能ならば、次年度末までに瓦林自身がフランスに赴き、短期間でも共同研究先であるロレーヌ大学、国立東洋言語文化研究所、トゥールーズ大学の3箇所のうち、できれば全てを訪問したいが、最低でもいずれか一つの機関だけでも直接訪問して、フランス人研究者の方々とお会いしてインタビューをしたり、現地の学校訪問や、資料収集を行いたい。さらに、本年度末に教育現場の記録のためにi-Padを購入したが、次年度にはこれまでに記録したデータを編集・保存するための周辺機器も、追加して購入する。
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