研究課題/領域番号 |
18K13074
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
武井 哲郎 立命館大学, 経済学部, 准教授 (50637056)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ネットワーク型ガバナンス / インクルーシブ教育 / オルタナティブ・スクール |
研究実績の概要 |
本研究が目指すのは、学校の内外に組織されるネットワークを分析の俎上にのせ、困難を抱えた子どもの排除という問題を解決するための視点を提示することである。2018年度は主として、学校教育の枠内で組織されるネットワークに注目し、障害のある子と障害のない子が同じ場で共に学ぶことを追求する「フル・インクルーシブ」実践を検討に付した。 「フル・インクルーシブ」実践を行う学校でのフィールド・ワークからは、個別の支援と集団の指導を分断させるのではなく、複数の教員が両者を一体として動かすことにより、障害のある子と障害のない子が同じ場で共に学べる環境が作られることが明らかとなった。この結果は、障害のある子が障害のない子からの分離を余儀なくされている学校において、個別の支援を担う教員が集団の指導に対して意識を向けていないか、集団の指導を担う教員が個別の支援に意識を向けていないか、あるいはその双方の問題が生じている可能性を示唆するものと言える。 併せて、学校教育の枠外にある団体とのネットワークについても調査を開始した。とりわけ2018年度は、不登校の子どもに居場所を提供する民間のフリースクールの中でも、「学校復帰」を目的に据えることなくオルタナティブな教育モデルを追求してきた団体に着目し、学校との対立をも厭わない団体との連携がもたらす影響について検討を進めている。 さらに、上記二つの調査から得られた知見をベースとしながら、ネットワーク型ガバナンスの展開について近年の動向を整理し、その問題性と可能性について論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の中で記載していた調査については、ほぼ予定通りに進めることができている。調査の結果からは、子どもの支援に携わるアクターを組織化することのネガティブな側面を推認させる知見も得られつつあり、学校の内外にネットワークを築くことの両義性を明らかにするという本研究の目的を達成するための道筋が見えてきた。また、ネットワーク型ガバナンスの展開について近年の動向を整理し、その問題性と可能性について理論的な検討を加え、それを2018年度中に論文としてまとめることができたのは、一定の成果だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度については、学校教育の枠外にある団体とのネットワークについて主に検討を進める予定である。具体的には、2018年度に引き続き不登校の子どもに居場所を提供する民間のフリースクールに自治体が助成金を拠出する事例に注目するとともに、生活保護世帯の子どもを主な対象とする学習支援教室を福祉の部局が開設する事例にも分析を射程を広げることで、官/民、教育/福祉の枠をこえた連携の実態を明らかにする。これらの調査から得られた知見については、できるだけ2019年度中に発表することを目指す。 他方、2018年度に注力した学校教育の枠内で組織されるネットワークの実態に関する調査は、2020年度以降に再度本格化させる予定にある。というのも、2018年度にフィールド・ワークを行っていた学校と2019年度の調査に向けてフィールド・エントリーを済ませていた学校がそれぞれ一つあったものの、いずれの学校においても管理職をはじめ組織体制の大幅な刷新が図られたからである。2019年度については、両校において再度ラポールの形成を試みるとともに、場合によっては他の学校で調査を行うことも視野に入れながら、今後の本格調査に向けた準備を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査協力者との日程調整の結果、2018年2月末になってから実施したインタビューがある。本来であれば、そのテープ起こしに要する費用として使用することを計画していたが、年度末のため、執行をすることができなかった。また、一部のインタビューについては、同じく調査協力者との日程調整の結果、2019年4月に実施することになったため、その旅費およびテープ起こしの費用として使用する予定である。
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