研究課題/領域番号 |
18K13075
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研究機関 | 四国学院大学 |
研究代表者 |
藤本 駿 四国学院大学, 公私立大学の部局等, 助教 (10582025)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 専門職基準 / 教師教育 / アメリカ |
研究実績の概要 |
本年度は、当初の研究計画に従い、米国教師教育制度の近年の改革動向を整理することと、専門職基準の全米的傾向の解明を目指した。 改革動向については、先行研究や専門職団体の報告書や関連資料をもとに分析した結果、連邦政府の教員政策の影響により州や学区レベルで質の高い教員の養成・採用・研修が重視されている点が明らかになった。 こうした先行研究の分析をふまえ、全米規模の専門職団体の中で、全米教職専門職基準委員会(NBPTS)の取り組みに着目した。NBPTSは、高度な専門職基準を設定し、この基準を満たす質の高い教員に対して資格認定(certification)を行う団体であり、多くの州や学区において資格認定を受けた教員(National Board Certified Teachers, NBCTs) へのインセンティブ制度の導入や、教員免許制度との関連が進められている。そこでNBPTSの取り組みに対して全米各州がどのように制度的に位置づけているのか、先行研究やNBPTS公表資料等から分析した。 その結果、NBPTSの資格認定システムは、NBCTsの専門性を生かし、学校改善を推進する取り組みとして位置づけられている点、NBPTSの資格認定の取得が、多くの州の教員免許状の更新や上進要件の一つとなっており、今日の米国教員免許制度に明確に位置づけられている点等が明らかになった。また、NBPTSの取り組みに関する全米的傾向として、NBPTSの取り組みを支援し法整備を進める州がある一方で、ほとんど普及していない州があるなど、二極化している状況が明らかになった。以上の分析結果については、アメリカ教育学会『アメリカ教育研究』第29号に投稿し、論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主に文献資料の分析をもとに、米国教師教育制度の改革動向の把握や、NBPTSの専門職基準の全米的傾向を明らかにすることができた。しかし、国内で収集できる文献には限界があるため、専門職基準に基づく制度構造や運用の実態に迫るためには、さらなる資料収集を行う必要がある。この点については、次年度現地調査を予定しているため、補填できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、先行研究や専門職団体の報告書など関連資料の分析をさらに進める必要があるが、専門職基準に基づく教師教育の制度構造や運用の実態に迫るために、現地での資料収集や関係者へのインタビュー調査を行う予定である。訪問調査については、研究費を踏まえ、1週間以内で集中的に行う予定である。調査対象としては、前年度の分析をもとに、専門職団体であるNBPTSの担当者を想定している。専門職基準の策定プロセスや、州の免許制度との関連などを聞き取りすることで、専門職基準に基づく制度構造を明確にできると考える。また、前年度の分析から、典型的な事例としてメリーランド州モンゴメリー学区を選定しており、州や学区の担当者を訪問予定である。訪問調査を通して州や学区レベルでの運用の実態に肉薄できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度繰越金が生じた理由として、当初参加予定にしていた学会に体調不良で参加できなくなったためである。また、ノートパソコンやプリンタが当初の計画よりも安価で購入できたためである。
繰越金の使用計画については、先行研究のさらなる分析を進めるために、米国を中心とした文献資料の購入に充てるとともに、米国への訪問調査の旅費にも使用し、訪問調査期間の延長を検討している。
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