研究課題/領域番号 |
18K13075
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研究機関 | 高松大学 |
研究代表者 |
藤本 駿 高松大学, 発達科学部, 講師 (10582025)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 専門職基準 / アメリカ / 教師教育政策 / 教員育成指標 |
研究実績の概要 |
本年度は、アメリカへの訪問調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大のため、前年度に引き続き断念した。そのため、これまでの文献調査の整理を進めるとともに、国内の教員スタンダードに関する調査分析を進めた。 まず、前年度にアメリカ教育学会で発表した内容を改めて検討し、大幅に加筆修正した上で勤務校の紀要に投稿し、論文化した。この論文では、全米教職専門職基準委員会(NBPTS)が策定した専門職基準が州や学区レベルでどのように活用され、制度化されているのかに着目し、先進的地域であるワシントン州を事例に分析を行ったものである。分析結果として、ワシントン州では教員団体がNBPTSの取り組みを積極的に推進している点、NBPTS専門職基準を発展させた教員リーダー育成のためのスタンダードを策定している点、NBPTS資格認定教員を活用した支援策が展開している点などを明らかにした。 次に、国内の教員スタンダードといえる教員育成指標やその策定組織である教員育成協議会に着目した。特に指標策定後の協議会の動向や実態について、教育委員会担当者へのアンケート調査やインタビュー調査を実施し、分析した。分析結果として、指標策定後は会議を継続している協議会が少ない点、継続している協議会の議題は指標細分化や研究計画との関連が多い点、指標再編に関する議論が少なく、再編のためのエビデンスも十分ではない点などを指摘した。これらの研究成果は、共同研究として2020年9月の日本教師教育学会で発表した。また関係学会誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も、主にインターネット等を活用し、文献調査を中心に進めた。特に専門職団体であるNBPTSの具体的な取り組みや、先進的事例であるワシントン州に関する分析を研究成果として公表できた。 一方で、当初は、文献調査を踏まえた上で、専門職基準の制度的な運用実態を明らかにすることを目指し、専門職団体や先進的地域への訪問調査を予定していたものの、新型コロナウイルスの感染拡大のため、断念した。したがって、当初の計画通りには進んでいない状況が続いているため、やや遅れているとした。 2021年度もアメリカへの訪問は難しいと考えられるため、オンラインによる聞き取りや、メール調査などを活用することで研究の遅れを補填していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初は3年間の計画だったが、訪問調査が実現しなかったこともあり、1年間延長を申請し、承認された。最終年度となる2021年度は、まずは訪問調査に関する調整を進めたい。ただし、現在の新型コロナウイルスの感染拡大の状況を考えると年度内の訪問は困難であるため、インターネット回線を利用したオンラインによるインタビュー調査の準備を進めたい。また、専門職団体や行政機関の担当者へのメールでの調査も検討している。 また、文献調査として、当初の計画通り、先進的事例に加え、特徴的な事例の分析を進めたい。すでに分析しているメリーランド州やウィスコンシン州に加え、州独自の教員専門職基準の活用を進めるカリフォルニア州にも注目する予定である。 以上を踏まえ、最終年度としてこれまでの研究を総括しながら、専門職基準に基づく米国の教師教育制度構造を明らかにし、研究成果として関連学会での発表や、関連学会誌への投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が大幅に生じた理由として、新型コロナウイルス感染拡大のため、2020年度中に予定していた訪問調査が実施できていないことが大きい。同様に、国内の学会や研究会が中止またはオンラインでの開催となったため、国内旅費を支出することもなかった。また、物品費に関しても、所属機関の研究費を十分に使用できたことなどにより、今年度は使用せずに次年度に持ち越すことにした。そのため、今年度持ち越した分を最終年度に改めて国内外の旅費や物品費として使用する予定である。特に、訪問調査が実施できない場合に備え、オンライン環境を整備するための物品費等に充てたい。
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