最終年度である本年度は、新型コロナウイルス感染拡大のため、予定していたアメリカ訪問調査を断念せざるを得なかった。そのため、これまでの文献調査を中心に研究成果をまとめた。 まず、全米規模の専門職基準を策定する全米教職専門職基準委員会(NBPTS)については、アメリカ教育学会編著『現代アメリカ教育ハンドブック第2版』に整理した。内容は、NBPTSの特徴や課題に加え、州や学区との関係、免許制度への影響についてこれまでの研究成果を中心にまとめた。 また、これまでの分析を踏まえ、教員専門職基準と教員免許更新制との関係に焦点を当て、12月の西日本教育行政学会で「教員専門職基準に基づく米国教員免許更新制の質保証に関する研究」というテーマで研究発表を行った。発表内容は、全米各州の免許更新要件を整理した上で、更新制の現状や特徴を明らかにするとともに、全米的・州レベルの教員専門職基準との関連を中心に質保証の取り組みについて分析・考察した。分析結果として、1点目は、NBPTS基準による資格認定取得プロセスが教員免許更新要件に位置づいており、教員の専門的成長の機会として有効性が認識されている点である。2点目は、各州で多様な取り組みがされる中で、教員評価結果との関連を重視する州が多く見られる点である。教員専門職基準と教員評価システムを結び付け、客観的な指標を用いて教員の質保証を図る点は今後の動向が注目される。一方で、課題としては、更新制そのものの意義や必要性が問われており、更新制が教員研修との関連においてどのような役割を果たしていくのか注視する必要がある。この発表をもとにした研究成果は、2022年5月に発行される西日本教育行政学会の学会誌に掲載されることが確定している。
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