本年度の調査を通じて、同一県内に存在する外国人学校であっても、知事権限である各種学校認可のあり方が大きく異なることが明らかになった。例えば、『在本邦諸外国人学校教育関係』(外交記録公開文書I'-0043、外務省外交史料館所蔵)においては、横浜山手中華学校の認可に関し、「本件が国府との関係では好ましいことではないが、国内法の規程に準拠し、合法的に認可を申請したものに対し、外務省として不許可しかるべしとの意見は述べ難い」とする一方、認可の是非を伺いに来た神奈川県知事に対し、「法規上は、両省〔外務省および文部省〕ともこれを禁止する規定もなく、困難であるが、県が決定権を持っているのだから、むしろ県の裁量で何とか防げないか」と提言していることが確認できる。結局、認可を是としない神奈川県に対し、横浜駐在中国領事館から公式に強い反対の申し入れがあり、同校は認可されることになった。確認すべきは、行政上の認可要件には含まれない国際政治上の事情が、認可の可否に影響を与えてきたことである。政治的事情を背景に、認可が認められないことによって、そこに就学する・させる者が様々な教育的・経済的不利益を被るのであれば、公平性・平等性が担保されていないことになる。 一方、例えば京都府内の朝鮮学校と韓国学校など、扱いに差異を設けない自治体があることも明らかとなった。その内部事情を詳細に明らかにすることは今後の課題であるが、裁量により不平等が生じないような仕組みづくりが求められることは、改めて強調しておきたい。
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